ボケ量の話F値の話の続きです。実話に基づいていますが多少脚色しています)

「キットレンズは面倒だから望遠単焦点のF値固定レンズを買ってきたぞ」

ぉ、なかなかの勢いだね。どれどれ、、、

イメージ 1

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撮影情報 αSweetDigital Voigtländer MACRO APO-LANTHAR 125mm F2.5 SL
ISO800 8のF2.5 多分割測光 絞り優先AE
(モデル 左:ミノルタAF50mm/F3.5Macro(1/2倍)、右:ミノルタAF100mm/F2.8Macro(等倍))
※これは文中に登場する人物の所有物ではなく、サクラの私物レンズを参考資料に掲示するものです。
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100mmのF2.8マクロレンズか、これはいいレンズだ。
これならキットレンズと使い分ければ作品づくりに幅が出てくるね。
当初希望の背景のボケた写真もキレイに撮れると思うよ。
ただ、、、

「ただ?ナニ?」

うん、これはズームレンズぢゃないけどF値固定というわけではない。

「うそつけっ!もうカタログの見方はわかってる、F値が1個しか書いてなければ固定だろ」

キットレンズや通常の単焦点レンズでは概ねその通りなんだが、マクロレンズによる近接撮影の場合は、レンズの繰り出し量が半端ぢゃないので、別途有効F値を意識する必要がある。

ちなみにカタログに書いてあるF値は無限遠を基準にしているが、実際に露出を決める為の有効F値は撮影倍率に関係した係数を加味する。撮影倍率はレンズの繰り出し量に連関している。

撮影倍率は超特殊な物を除いて1倍以下。丁度1倍の状態を等倍、1/2倍の物をハーフと呼んだりする。
マクロレンズといったらせめてハーフくらいの撮影倍率は欲しいところだが、今は1/4倍くらいのズームレンズでもマクロと冠していることがあるので、機材を選択するときはそのレンズがどの程度の倍率までイケルのか確認したほうが良い。
今回買ってきたレンズは等倍まで可能になっているね。

なお、ツウな人たちはレンズの操出し(撮影倍率を等倍に近づける)によって、有効なF値が暗くなることを「露出倍数が掛かる」といったりする。

で、その露出倍数を加味した有効F値を算出する計算式はこうだ・・・

「ヲィ、待て、また計算かよ、、、んで、それってこないだのコメントにあったT値のことか?」

T値はレンズの透過率の話。光量のロスを加味するという意味では同じだが、T値は今回の有効F値とは別な話だよ。ごちゃごちゃになるからT値の件は別な機会に話そう。

で、有効F値の計算式はこうだ・・・と思ったが計算式は意外と不評なのと、実際には計算しなければ解らないというほどの値のレンジ(幅)がないので、実用的な範囲で値の列挙としよう。

等倍=表示F値+2段落ち、1/2倍=表示F値+1段落ち、無限遠=表示F値のママ(ロスなし)

F2.8で等倍だったらF5.6相当、ハーフだったらF4だね、超簡単。

レンズのピントリングを見ると、今どのくらいの倍率になっているか書いてあったりするので目安になる。

「ところで撮影倍率の等倍ってナニがナニと等しいの?」

撮影する対象物の実際の寸法とフィルム面に写しこまれる寸法が等しい。
→被写体の大きさがそのままのサイズでフィルム面に映る。
→フィルムは結構小さい(24mm×36mm)ので、L版にプリントするだけでもかなり拡大した感じで写る。

当然、フィルム面のサイズよりでかいものは等倍撮影できないので倍率を下げるか、または部分的に切り出すような撮影になるね。

また、今使っているカメラはフィルムぢゃなくてデジタルCCDだから、機種によっては更に換算が必要になるけど、それは有効F値の算出には関係ない。
(↑すいません、マーカー部間違えました、端っこが切れるだけで倍率は同じで換算はいりません)

「うへー、大変なものを買っちまったなー、キットレンズより更に面倒ぢゃんか」

大丈夫、今のカメラはそんなこと知らなくても使えるようになっている。
カメラに内臓されている露出計はTTL露出計といって、レンズを通した明るさで測光しているので、露出倍率や後日説明する透過率も全部ひっくるめて露光量を決定しているんだ。

なので、カメラボディに設定したF値がF2.8になっていても、等倍まで繰り出していれば実際にはF5.6相当の明るさでSS(シャッタースピード)が決まることになるね。

開放で撮っているのにどうもSSが上がらないなと思ったら、この露出倍数のことを思い出すんだ。
等倍なら露出2段落ちとなるのでSSは4分の1となる。SS=250が60まで下がるんだから相当な影響といえる。
(機材によっては繰り出し量応じた有効F値がカメラボディに表示される場合がありますが、見かけ上のF値がそのまま表示される機種もあります)

ちなみに人物撮影なら等倍どころかハーフまでもいかないような距離感で撮るんぢゃないですかね。
実際にレンズをつけて撮ってみるとわかるんだけど、100mm(35mmフィルム版換算150mm)は結構な望遠で、被写体距離1.5mでは近すぎる場合が多い。3~4m離れてフォーカスし、リングに表示されている撮影倍数を見ると意外と行ってないことが多い。
なので露出倍数のロスも撮り方によっては意外と軽微なものかもしれないですよ。

要は、人物や風景など多少でも離れて撮るときと、花とか500円硬貨などをアップで撮るときは露出が変わってきますということです。

「そっかー、いろいろあってもTTL露出計って万能なんだな、カメラに任せておけば最適ってことかー」

いや、そうでもない。実は、、、、

「まだなんかあんのかぁ?あぁん?(語尾上げ↑で読む)」

今、TTL露出計が万能と言っただろ。それさえ言わなければ・・・・

次回はTTL露出計について話すしかないな。。。

(文中の数値・数式などは近似値です)