木曜日…。今日も何の変哲もない一日がはじまる。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた通勤電車…。化粧とあぶらの臭いが、たちこめている。
いつものコトだ…。もう何年もこの電車に乗っていると「嫌だ」とすら思わなくなっている…。減速した電車の揺れでとなりのOLが私の足を少し踏んだ。多少の痛みはあるのだが…もう腹を立てるコトはなかった…。
満員電車の中、前の女子高生達が楽しそうに大声で話している…。周りの人は眉間にシワを寄せ、彼女らを睨んでいたが…私には何の感情も無かった。
他愛の無い女子高生の会話…私は、ふと懐かしく思った。
自分にもこんな時代があったのだと…。
何がある訳でもない…しかし、ただただ…楽しかった。あの青春が…。


『青春…私は一体、あの青春をドコに忘れてしまったのだろう…。』


電車はいつもの様に、いつもと同じ時間に乗り換えの駅についた。
電車の扉が開くと、ぎゅうぎゅうに詰まった人と臭いが一気に流れ出す。
私もその人の流れに乗り電車を降りようとドアの方に目をやった。

『ん?まさか?』

一瞬、自分の目を疑った。しかし間違いはなかった。
ドア近くの網棚にあったのは…間違いなく“青春”だった。


『きっと誰かが忘れていったんだ!!』

周りの人々は誰も気づいていない。

『大変だ!きっとコレを忘れた人は困ってる筈だ‼』

ホームに出る人の流れの中、私は必死に手を伸ばし網棚にあった青春を掴んだ。

電車を降り私は近くにいた駅員に伝えた。
『あ。忘れ物です。コレ…青春だと思うんですが…きっと落とした人も困ってると思うんで…』

すると駅員は、大きな声で私に言った。
「はぁ⁇ あんた何言ってんの??」

『いや…ですから…電車に青春が忘れてあったんで……』

「朝から何言ってんの?バカじゃないの?次の電車来るんで、、、」
駅員は全然取り合ってくれませんでした。

腹の立った私は、その駅員に「タイマンはれ!」と言って、駅員をフルボッコにしました。

『おぉ‼今まで何の感情も無かったのに…‼
懐かしいぞ‼この湧き上がる感情。
そうだ‼コレだ‼コレが青春だ‼』

私はこの感情を抑えきれず、そのまま乗り換えの駅から会社まで走って通勤した。

昼過ぎに会社に着いた。すると上司は怒ってきた。なので仕方なくタイマンをはりました。

メリケンサックでボコボコにしました。

『すごい!すごいぞ青春‼怖いものなんて…何もない‼』

私は、道という道に、ツバというツバを、吐きに吐いて歩いた。
窓という窓を叩き割りながら…。
ほどなくして警察がやってきたが…ポリ公なんて、ちっとも怖くはなかった。
『タイマンはれぇ!コラぁ‼』と叫んだが、無視をされ7~8人に抑え込まれた。
警察署に連れて行かれ…こっぴどく怒られた。しばらく家には帰れないらしい…。
警察署内のトイレに行く途中、中学生くらいの男の子とすれ違った。
肩が当たったので、すぐタイマンをはるように私は言った。

すると、その金髪リーゼントの特攻服を着た歯の無い中学生は、聞いているのかいないのか…開いているのかいないか、わからないような目でこちらを見て言った。
「あれ⁇……警察にも届いてないのか……。ドコいったんだろう…オレの…。」