春…出会いの季節。

ボクは“人数合わせ”という理由で合コンに強引に連れて行かれた。

人見知りがスゴいボクは、こうゆう初めて逢う人間と、打ち解けるのがスゴく苦手だった。
ましてやそんな人間と恋愛に発展するなんて…
全く信じられないコトだった。

その日は5vs5の合コンでした。
大学のいつも一緒にいる友達5人に、女子4人…1人は、バイトで遅れてくる様だ。
居酒屋に入り…一杯目のお酒が来るまでの「間」。
ボクのストレスはピークに達していた。
女子の中の1人は、偉そうに“恋愛と結婚は違う”などの“結婚観"を、もう既に語り始めていた…。
「気まずい…なんなんだ?この下らない話は??そして…この…よそよそしい間は‼なんなんだ!?」
まともに女子の顔を見れないボクはずっと下を向いていた。
果てしなく長く感じた間の後、みんなが頼んだお酒がやっと来た。

「乾杯!!!」

元気よく…でも作り笑顔でみんながジョッキをぶつけ合った。

そしてその時ボクは初めて相手の女子達の顔見た…。

そしてボクの頭のてっペンから足の先まで電気が走った…。
その時、1番左に座っていた彼女に…
一目惚れしたのだ。完全に一目惚れである。

こ…こんなコトがあるのか!?
初めて顔を見ただけで…人を好きになっている…。
胸の鼓動が止まらない…。

胸のドキドキを抑えるためにボクは一気にビールを飲み干した。
すると、左から2番目の女性が話しかけてきた。
「飲むの早いですね?」

「えっ…まぁ」ボクはチラっと横目でその子に会釈をした。

「おかわり頼みますか?」左から2番目の女性がボクに聞いてきた。

「あっ…はい」ボクはまたチラッとその子を見て頷いた。

すると、ボクは頭のてっペンから足の先まで電気が走った…。
“二目惚れ”したのだ!完全に二目惚れしたのだ!!
一目見た時は何にもなかったのに…
二目見た瞬間に完全に好きになってしまったのだ!!

更なる胸のドキドキを抑えるために、ボクはお通しの枝豆を皮ごと一気に食べた。
すると、左から3番目に座ってた女性がボクに話しかけてきた。
「枝豆好きなんですか?」

「えっ…まぁ」ボクはチラっと横目でその子に会釈をした。

「私、顔が枝豆に似てるって…よく言われるんです」左から3番目の女性は言った。

「は??」ボクは声を出しその子の顔を見た…。
ソックリだった。左から3番目の女性は、顔が本当に枝豆ソックリだった。
形から何から…色ツヤまで、ほんっとに塩茹でした方の枝豆ソックリな顔だったのだ!!
あまりにも塩ゆでした方の枝豆に顔が似てたので…2度見をして、もう一度確認した。

ボクは頭のてっペンから足の先まで電気が走った…。
“三目惚れ”したのだ!完全に三目惚れしたのだ!!
一目見た時は何にもなかったのに…
2度見の1度見目の時も何もなかったのに…
2度見の2度見目…つまり、計三目見た瞬間完全に好きになってしまったのだ!!

惚れた人間が三人も目の前にいる…
もう、胸のドキドキは抑えられない。三人が三人とも本当に好きになってしまった。
この中から一人なんて選べない。
ボクはずっと悩んでいた…。

しかしそんな中、ボクには気になるコトが一つあった…。

ちっとも走らないのである。

……1番右の女性である。
この人だけは、何度見ても…電気が走らないのである…。
もう100目以上は見てるのに…
全く電気が走らない。

127目ぐらいを見た時だったろうか…?

ボクは頭のてっペンから足の先まで電気が走った…。

「やっときた!!やっとこの子に“目惚れ”ることができた!!」ボクは、内心ホッとした。

“零目惚れ”だった……。完全に零目惚れだったのだ!!
バイトで遅れて、まだ来ていない女性…
まだ見てもいない女性…
一目も見ていないのに…もしかしたら女性じゃないかもしれないし、犬とか毛虫かもしれないのに…完全に好きになってしまったのだ!

それにしても1番右の女性は…未だ何度見ても、なんとも思わない。
あの合コンから今まで…何万目と…1番右の女性の顔を…いや…由美の顔を見ただろう…。

あれから20年間…
毎日…
同じの家で…

顔を見てるのに…

電気は走らない…。