今日私は病院に行って来た……。
ドコが悪い訳ではない…病院に呼ばれたのだ。

会社を休み、朝早くに病院に行くとすぐに応接室に通された。

私には、わかっていた……。
何を言われるのかを………。


応接室に行く前に、親父の病室に寄った。
親父はこの前の健康診断の後“ちょっとした胃潰瘍がある”そう言われて入院をしていた………。

いつも通りの元気な親父の笑顔…。
「何でオレが入院なんかしなきゃいけないんだよ!!」
いつも通りの親父の文句…。

『こんな元気な親父が何故………??』
しかし私はそれ以上考えるのを止めた。
『後でまた来るわ!!』と笑顔で親父に言った。

応接室に着き、ドアを開けると、そこにはいつもの親父の担当医がいた。

「どうぞこちらへ…」と、重い口どりで、とても高級そうに見えるソファーに座らされた。

『ふかふかだ!!このソファー超ふかふかだ!!すげぇ!!』
私は言った。

担当医は無視した。

ほどなくして、あれは婦長さんだろうか…、高級そうな湯飲みに入った、コレまた高級そうなお茶を持ってきた。

『このお茶おいしい!!………でもソファー超ふかふかだ!!ホントこのソファーすげぇ!!』
私は言った。

担当医は無視した。

それから、どれぐらいの沈黙があっただろうか……。
担当医は重く、そして小さな声で言った……。
「お父さんのコトなんですが…」
そう言うとまた暫く医者は口を閉ざした。

『大丈夫です。覚悟はできています。正直におっしゃってください!!』
私は言った。

担当医は無視した。

また暫く、沈黙が続いた。
窓の外が夕焼けに染まる頃、担当医はまた口を開いた。
「………正直なんと言ったらよいか………驚かないで聞いてください……」
担当医は、とても低くそして小さい声でたどたどしく言った。

私は無視した。
“お返し”とばかりに無視した。
しかし担当医は無視を気にすることなく続けた。

「杉山さん………お父さんは……………」


「……………………………………………」


「……………………………………………」


「……………………………………女性です。」

『!!!!!??????。お………親父が?女!?』
薄々分かってはいたが、改めて他人から聞いてしまうと…やはりショックは隠せなかった。

「残念ですが、我々には…どうすることもできません。」
……担当医は言った。

聞くと神取忍と、ちょうど同じ症状らしい。
“お母さん”と呼んであげるコトが今の家族にできる最大の治療だそうだ…。

男手一つで私と妹を育ててくれた親父が女だったのか………。

私は悲しく、悔しい気持ちを抑え、努めて明るくの病室に戻った……。

「何?無理矢理、明るい顔作ってんだ!!悲しい顔するな!!大丈夫。オレは全部わかってるから…」
と、笑顔で言った。

『………おやじ……いや、お母さん!!!』
私は言った。

お母さんは無視した。