前回に引き続き、
「恋愛体質 - 30歳になれば大丈夫」( 2019 JTBC )がお題。
30歳を迎えた大学同期 3人組の仕事や恋愛、日常の悲喜こもごもを詳細に描きます。
主人公は、
(左)映像ドキュメンタリ監督 イ・ウンジョン(チョン・ヨビン)
(中)新人ドラマ作家 イム・ジンジュ(チョン・ウヒ)
(右)ドラマ制作会社チーム長 ファン・ハンジュ(ハン・ジウン)
上段のコピーは
「『三十』になれば
『大人』になる方法が
分かった?!」
若さで押し切るには時が経ち、経験を語るにはまだ早い 30歳のリアルといったところです。
また、このドラマは放送時に視聴率で惨敗。
ところが放送後にネットなどで話題となり、配信サービスで高い順位を維持し続けました。
そうなってしまったのは、このドラマの特異な構造が影響したようです。
場面構成が多義的で自己や外部への言及が多く、放送時の週 2回視聴では全体像を把握しずらいため、どうしても途中参入のハードルが高くなってしまいます。
ドラマ内に、こうした事態を予言するかのような場面。
低視聴率に衝撃を受けたドラマ監督ソン・ボムス(アン・ジェホン)が、「先生、視聴率なんか関係ないですからね」と虚勢を張ります。
分かりにくいと感じられてしまっただろう一例。
主要人物だけでも、
左から二人目、新人ドラマ作家ジンジュが書いた脚本を、右隣ハンジュの勤務するドラマ制作会社が担当。
右端、映像ドキュメンタリ監督ウンジョンは、そのドラマの出演者に着目して密着取材中。
左端、ウンジョンの弟イ・ヒョボン(ユン・ジオン)は音楽制作スタジオ勤務で、そのドラマの OST (挿入歌)制作に参加するというややこしさ。
スポンサークレジットは「トレタ」( 토레타 )、韓国コカ・コーラ社のイオン飲料。
7 - 8年前、日本コカ・コーラ社も同名の「 Toreta 」を販売していましたが、数年で消えてしまったように思います。
この「トレタ」がドラマ内で大活躍。
ボムスの首筋を冷やしたり、
渇きを癒します。
ジンジュの執筆疲れも癒します。
ところが別の場面、
「水分補給が大事」と差し出されたボトルを、露出はもう十分と判断したボムスが制止。
( PPL 画面内商品配置も)「いい加減にしろ」とたしなめる自己言及。
更にドラマ内に登場した討論番組では、
「最近のドラマは宣伝のためのシーンが多く、批判を集めています。」
「プロダクト・プレイスメント( PPL )の概念に合っていません。」と更に上位の自己言及。
ところが議論するテーブルの上には、韓国コカ・コーラ社の機能性飲料「食後の秘法W/身体の健康W」( 식후비법W/신체건강W )が文字をぼかして並ぶのでした。
「身体の健康W 」といえばユ・インナ出演の CM を連想します。
今度は自販機で水を買おうとすると、韓国コカ・コーラ社の「フィオスンス」(ビオ純粋/純水)。
日本コカ・コーラ社の「いろはす」と同じコンセプト。
やっぱりコカ・コーラには勝てません…
コカ・コーラと並ぶ大物スポンサー
カフェチェーンの「セレクトコーヒー」( SELECTO COFFEE )。
打ち合わせは必ずこちらのお店、もしかすると事務所より回数が多いかも。
店名の「 SELECTO 」は誤字/当字ではなくスペイン語由来。
ならば「 COFFEE 」ではなく「 CAFÉ 」ではと思いましたが、コーヒー = 飲みもの、カフェ = 飲食店という使い分けが一般的なため、「選りすぐりの『コーヒー』」を強調した店名のようです。
この場面、気まずさから壁に向かって話します。
サービスショットはロゴ入りグラスのクローズアップ。
謎のギター演奏会場も「セレクトコーヒー」。
(左奥に看板)
この場面で歌われる曲を前回取り上げました。
あまりの登場頻度に、「どうして毎回、ここなんだ?」との禁句が飛び出します。
すると身も蓋も無く、「大人の事情ってものがあるのよ」と返されてしまいます。
あーあ、とうとう言っちゃった。
次はドラマによく登場する大型マッサージチェア。
如何に自然に見せるかが腕の見せどころ。
一度目はボムスが台本を読む場面。
契約の都合上もう一度出す必要があるのに、置ける空間のある場面が無い。
そこでドラマ制作会社の担当、チュ・ジェフン(コンミョン)が「いっそストーリーと無関係に展開してしまいましょう」と無茶な提案。
ジェフンの上司ハンジュが出演し、唐突に始まる場面。
「なんでマッサージチェアがあるの?」という言い訳セリフ。
しかも色調をセピアに変える芸の細かさ。
更に「15秒間映す必要があるから、もう少し待って」とカウントダウン。
懸案が片付き、「トレタ」を飲んでひと休み。
あまりの力業に、ボムスとジェフンが「俺達もよくやるよな」とほくそ笑みます。
時代劇ならさしずめ、「おぬしもワルよのお」「いえいえボムス様ほどでは」。
このドラマには、こうした画面内商品配置( PPL )を逆手に取った描写が頻出します。
とりあえず今回はここまで。
次はどうしようかなあ