「皆さん、こんにちは。わたくしは
芹澤科學研究所の芹澤大助です。
前回に引き続き
水爆により目覚めた大自然の脅威
ゴジラについてお伝えしております。」
という訳で、今回も東宝怪獣映画の傑作「ゴジラ」( 1954 )、第 2 回です。
と言ってもストーリーにはあまり深入りせず、画面に写るものを中心にするつもり。
小笠原諸島の南、火山列島(硫黄列島)最南端、南硫黄島周辺海域で、謎の海難事故が相次ぎ発生。
更に、現場から近い大戸島 *1 が突然の大災害に見舞われ、島の古老は伝説の怪物「呉爾羅(ごじら)」の仕業に違いないとつぶやきます。
相次ぐ災難に呆然と佇む島民たち。
*1 「大戸島(おおどしま)」
火山列島(硫黄列島)に設定された架空の島。
その位置にも関わらず南国情緒の無さが特徴。
実際の撮影は三重県、志摩半島東端近くの鏡浦村 石鏡(いじか 現;鳥羽市 石鏡町)。
上空から見る志摩半島先端付近。
原因究明のため、海上保安庁の巡視船による調査団が派遣されます。
1951 年就役の「 PM-20 こうず」。
「改 450 トン型」巡視船 3 番船。
大戸島に出現したゴジラに遭遇する調査団。
「ぅぅうぎゃぉおおぉ~ん!」
「きゃあぁ~ 尾形さん!」
「大丈夫かぃい 恵美子さん!」
調査団に参加した「南海サルベージKK」所長、尾形秀人の愛車。
往年の名門、みづほ自動車製作所が製造した「キャブトン( CABTON )号」。
旧い人なら知っている、「キャブトン(キャプトン)マフラ」の元祖。
カワサキ W800 の「キャブトンマフラ」(赤矢印)。
排気管が途中で膨らみ、元に戻る形が特徴。
尾形の事務所に貼られている、「キャブトン号」のポスタ。
この頃から既に PPL (画面内商品配置)が行われていたのでした。
その昔は「タイアップ」なんて言いました。
芹澤博士を取材する「毎朝新聞」の社有車。
「クライスラー・ダッジ・コロネット」
( Chrysler DODGE Coronet 1951-2 米)
緊急放送を伝えるラジオが「オンキヨー」製。
中央上部、受信状態を光で示す「マジックアイ」が何とも懐かしい。
ふと、横を見ると
「 ONKYO 」製オーディオの上に…
「ぅぎゃぉおぉ~ん!」
東京湾にゴジラが出現。
品川駅周辺を破壊し、姿を消します。
ゴジラを巡る事態を静観出来なくなった「諸外国」が、圧力を掛けに「調査団」名目で続々来日。
これがもう、往年の名機揃い。
日本航空( JAL/JL )の「ダグラス DC-6B 」
( Douglas DC-6B )
プロペラ前に窓が無いので、おそらく「 6A 貨物型」を改造した「 6B 旅客型」( JA6201-3 )。
P&W R-2800 ダブルワスプ
(Pratt & Whitney R-2800 Double Wasp )
空冷複列星型 18 気筒 45.9L( 2,800in³ )
2,400hp エンジンを 4 基搭載
エンジン重量が 1 基あたり約 1t
レシプロエンジンって重たい
「パンアメリカン航空( PAN AM )」( PAA/PA )の
「ボーイング 377 ストラトクルーザー」
( Boeing 377 Stratocruiser )
「 N1025V ( Clipper Celestial )」号機のようです。
大型戦略爆撃機 B-29/B-50 スーパーフォートレス( Superfortress )をベースに開発された、現代の A380 に匹敵する当時の超大型機。
何とキャビンが 2 階建。
とはいえサイズ的には全長 33.6m
大体 B737-700 くらい。
ANA JA01AN “金鯱号” (旧石垣空港 2011)
現代の飛行機の巨大さに改めて驚きます。
また 377 ストラトクルーザーは
最強の航空機用レシプロエンジン
P&W R-4360 ワスプメジャー
(Pratt & Whitney R-4360 Wasp Major )
空冷4列星型 28 気筒 71.49L( 4,362.5in³ )
3,500hp を 4 基搭載
このエンジン重量が 1 基 1.63t
レシプロエンジンってやっぱり重たい
という事は、第 3 世代 B737 ( 600 - 900 )用 CFM56-7B ターボファン・ジェットエンジン 1 基が、ワスプメジャー 2 基に相当
SKYMARK B737-800 JA73ND (長崎空港 2011)
CFM56-7B の重量が 1 基 2.37t
(1.63×4)-(2.37×2)=1.78
エンジンだけで 1.78t もの軽量化。
やっぱりレシプロに勝ち目無し…
377 のライバル「ロッキード・コンステレーション」
( Lockheed Constellation )
ロッキードの機種記号がかなり複雑。
「 L-**49* 」と表記し、* 印部分がモデル毎に異なります
B-29 スーパーフォートレス用に開発された
ライト R-3350 デュプレックスサイクロン
( Wright R-3350 Duplex Cyclone )
空冷複列星型 18 気筒 54.9L( 3,350in³ )
2,200-3,250hp エンジンを 4 基搭載
(モデルにより出力が異なる)
サイズはショートデッキが 29.0m
B737-500 “ごまちゃん” と同等
AIRDO JA8196 “ベアドゥ号” (羽田空港 2011)
大型戦略爆撃機 B-29 スーパーフォートレス( Superfortress )もこのサイズ。
但しプロペラ機故、全幅は 40m 超え。
ロングデッキモデル「スーパー・コニー( Super Connie )」でも B737-400 くらい。
JTA JA899 “南西航空 SWAL-JET” (旧石垣空港 2013)
いやはや、時代の変遷を改めて感じます。
1950 年代といえば、レシプロエンジン旅客機、最後の時代でした。
また、戦時中の日本が実用化出来なかった 2,000 馬力超えエンジンを多種目の当たりにした、当時の日本の技術者の心情は如何許りかと思うのです。
米国空軍マーク+サイドライン?
「要人輸送型 [VC-121] コンステレーション」のようです。
「 MATS( Military Air Transport Service ) 米国軍航空輸送部」。
「輸送機型 [C-121] コンステレーション」かな。
当時の諸外国の圧力は「壱に米国、弐に米国、参四が無くて、伍にアメリカ」かあ。
あれ、今でもあまり変わっていない?
その後「諸外国調査団」の姿は全く見えず。
ゴジラ、銀座周辺に再襲来。
破壊される銀座和光の時計塔。
ついでに国会議事堂も破壊。
けれども国会は空疎な議論の繰り返し。
なので破壊されても大勢に影響無し… かも。
破壊以前、
国会対策委員会でのやり取りがもう秀逸。
与党、大山委員(恩田清二郎)。
「只今の山根博士の報告は誠に重大で在りまして、軽々しく公表すべきでは無いと思います。」
野党、小沢委員(菅井きん)。
「何を言うか!重大だからこそ公表すべきだ。」
与党大山「黙れ!ゴジラなる代物が水爆の実験が生んだ… 」
野党小沢「その通り、その通りじゃないか!」
大山「そんな事を発表したら、只でさえ五月蠅い国際問題がどうなるか!」
小沢「事実は事実だ!」
大山「だからこそ重大問題である。
軽率に公表した暁は国民大衆を恐怖に陥れ、延いては政治経済外交迄混乱を惹き起こし… 」
小沢「馬鹿者!何を言うとるか。」
野次「馬鹿とは何だ馬鹿とは… 退場しろ!退場… 」
小沢「事実は堂々と発表しろ!」
結局委員会は大混乱。
太字 で強調した部分にやれやれです。
「認め難い現実は、事実だからこそ公表を躊躇う… 」
ああ今も何も変わっていない…
邪魔だとばかりに勝鬨橋(かちどきばし)をへし折るゴジラ。
航空自衛隊(劇中;防衛隊)所属の最新鋭戦闘機「 F-86 セイバー( Sabre )」による攻撃も効果無く、海に消えるゴジラ。
終戦から僅か 9 年、空襲の悪夢が蘇る東京。
焦土と化した街で苦闘する人々。
続々と負傷者が運び込まれる臨時救護所(劇中;臨時収容所)。
目黒の「伝染病研究所(現;医科学研究所)」。
ゴジラを倒す唯一の可能性を知るが故、苦悩する若き三人。
前回も書きましたが、不条理劇の舞台みたい。
紆余曲折の末、
「オキシジェンデストロイヤー」発動!
「じゅわわわわわぁ~!」
ゴジラと人類の運命や如何に…
あらら~、すっかり長くなってしまいました。
取りあえず、今回はここまで。
とはいえ、続きなんてあるのだろうか?
「あの、ゴジラの同類が
また、世界の何処かへ
現れて来るかも知れない… 」
一応の解決を全く喜べず、愁いが余計に深まる山根博士なのでした。