2017 年に、韓国 SBS が巨費を投じて製作するも、視聴率低迷にあえいだといわれる迷作(怪作)、「師任堂(サイムダン)、色の日記」(原題; 師任堂、光の日記 [사임당, 빛의 일기] )の隅っこを眺めています。
このドラマは、現代と約 500 年前、朝鮮王朝 11 代王「中宗」時代の物語が交錯します。
現代編、巨大財閥ソンジングループの陰謀に巻き込まれ、仕事を失った三人組。
左ハン・サンヒョン(俳優名;ヤン・セジョン 以下同)、
右奥コ・ヘジョン(パク・ジュンミョン)、
右手前ソ・ジユン(イ・ヨンエ)。
三人の中宗時代の縁(えにし)。
左、コン氏夫人(パク・ジュンミョン)と、右「申師任堂(シン・サイムダン)」(イ・ヨンエ)は、大人になって再会した幼なじみ。
若き日の師任堂(パク・ヘス)と将来を誓った王族の末裔、若き日の「宜城君(ウィソングン) イ・ギョム」(ヤン・セジョン)。
設定上はこちらも幼なじみかな。
過去の縁に支えられ、現代の陰謀を紐解こうとします。
三人組のアジトはクラブの奥。
そこに悪漢ミン教授(チェ・ジョンファン)一味が乗り込もうとしますが、週末の「 MOVIE STAR CLUB DAY 」のため映画のコスプレでないと入場不可。
ミン教授と二人の助手がひねり出したアイデアが…
分かるでしょうか?
ミン教授は、観葉植物の鉢植えを抱えた孤独な殺し屋レオン・モンタナ(ジャン・レノ)。
1994 年の仏・米映画「レオン ( Léon )」。
二人の助手はおそらく 1997 年の米映画「メン・イン・ブラック ( MEN IN BLACK )」。
フェドラ帽をかぶり、1980 年の米映画「ブルース・ブラザース ( The Blues Brothers )」にすれば格好良かったのに。
ミン教授一行、あまりのセンスの悪さから、入口の用心棒に却って怪しまれてしまいます。
そこで繰り出す必殺技が『サイムダン!』。
50,000ウォン札の顔、申師任堂。( 詳しくは前回記事をご参照ください )
師任堂を巡る陰謀のため、サイムダン( 50,000 ウォン)を活用(悪用?)するという皮肉。
ミン教授に踏み込まれ、たまたま週末のクラブに遊びにきた態を装うジユン(イ・ヨンエ)。
「○ソみたいな私の人生にピッタリかと… 」が決めセリフ。
2005 年の韓国映画「親切なクムジャさん」の主人公、クムジャさんです。
密かに復讐を誓うクムジャ、「師任堂」の主人公ジユン、共に演じるのはイ・ヨンエ(笑)
秀逸なセルフパロディであると同時に、「レオン」と「メン・イン・ブラック」が象徴する「殺し屋」に対抗する、「復讐者」としてのクムジャとジユンという、強烈な含意のようです。
イ・ヨンエの無難で最も理解されやすい扮装なら、何といっても「チャングム」でしょうから。
ほんのじじいの繰り言。
最近の日本映画やドラマがいまいち喰い足りない理由が、こうした外部世界への言及が弱いというか、いわゆる「世界観」の拡大が殆ど出来ない事にあるような気がします。
劇中に小さく留まってしまう事で、空間の狭さをより感じさせるとでも言いましょうか。
サブカルチャーって、メインカルチャーを含む大きな流れに対抗し、膨大な引用符を駆使して再解釈を促すような、カウンターカルチャーが本来の源流だったのではないかと。
まあ、今時こんな事をぼやいても、所詮 20 世紀型お〇く世代の妄想や願望、郷愁に過ぎないのでしょう。
ファンデーションケースの鏡に見入ると、クムジャさんが戦闘モードに入ります。
「申師堂」でもきっちり再現していました。
全く別の化粧シーン、クムジャさんの印象があまりにも強烈だったため、「おお、戦闘モードに入ったぁ」と思ってしまいました(^^ゞ
化粧シーンが度々登場するのは、実はイ・ヨンエが 2006 年から広告モデルを務める化粧品ブランド、「 The History of Whoo 」がスポンサーに付いているため。
イ・ヨンエとの関係が 10 年以上続いていたら、スポンサー契約をしない訳にはいきません。
関係ありませんが、「 The History of Whoo 」は LG 電子の系列会社。
韓国の財閥系企業って、本当に何でも持っています。
ちなみに、ミン教授がクラブに踏み込んだ時のハン・サンヒョン(ヤン・セジョン)の扮装は、一般的な海賊イメージでしょうか。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」のディズニーは、版権/肖像管理に厳しい事で有名です。
コ・ヘジョン(パク・ジュンミョン)は、1992 年の米映画「天使にラブ・ソングを」のウーピー・ゴールドバーグ。
クラブネタは、まあこの辺で。
ジユンの姑キム・ジョンヒ(キム・ヘスク)は、おそらく今まで働いた事が無い奥様なのに、家計を助けようと化粧品の訪問販売を始めます。
その姿を嫁のジユンに見られてしまい、足早に立ち去ろうとします。
キャリーのロゴが「 사임당화장품 (サイムダン化粧品)」。
「サイムダン化粧品」はドラマに合わせた設定かと思っていたのですが、実在するブランドで、スポンサーにもなっているのでした。
確かに申師任堂のドラマとあっては、名乗りを上げない訳にはいかないでしょう。
ところが関係はそれだけではなく、「サイムダン化粧品」の広告モデルを務めるのが、若き日の師任堂を演じたパク・ヘスなのでした。
出演者が広告モデルを務める企業との関係が、ドラマのスポンサー事情に影響する事も多いため、全く油断なりません(^^ゞ
パク・ヘスは現代編に登場しないため、来世の姑(キム・ヘスク)が代役を務めたとか?
ゴルフ練習場で会っている訳は、こちらもスポンサーのゴルフウェア関連。
現代編でソ・ジユン(イ・ヨンエ)の姑キム・ジョンヒ(キム・ヘスク)。
500 年前は中宗の父 9 代王「成宗(ソンジョン)」の側室「貴人 南氏(クィイン ナムシ)」。
中宗への影響力が大きく、師任堂の幼なじみ「宜城宮(ウィソングン)」(ソン・スンホン)を圧迫する存在。
「嫁と姑は前世の仇」という寓意?
日本的感覚ではスポンサーは一業種一社と思いがちですが、上記、化粧品メーカーのニ社体制など、韓国ドラマではそうとは限らないようです。
車両関係も「ジャガー+ランドローバー」と「シボレー」のニ社 3 ブランド体制。
車を取り上げ出すときりがありませんが、代表的な「レンジローバー・スポーツ」。
レンジローバーが停車したのは、ソウル市街北部、城北洞の「三清閣(さむちょんがっ)」。
1972 年の南北代表会談用に建設され、2001 年に一般開放されました。
ドラマロケ地の定番で、お金持ちの邸宅や、権力者の密談の場などに登場します。
狭いところに入り込む「ジャガー XE 」。
ソウルの狭い道で大きな車を乗り回すのは大変です。
悪役さんズが逃走に使うのが「シボレー・マリブ」の 8 代目。
9 代目登場直前の撮影だったと思われます。
自分で言うのも何ですが、よくもまあ、ここまでストーリーに関係の無い事ばかり思い付くものです。
つづきは、どうしようかなあ。