中国:薄熙来氏、巧みな人心掌握 日本語で「今はあなたしか」 魅せられた日本の要人 | ねこ目

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中国:薄熙来氏、巧みな人心掌握 日本語で「今はあなたしか」 魅せられた日本の要人

http://mainichi.jp/area/news/20120517ddn001030005000c.html

中国共産党政治局委員の職務を停止され、次世代リーダーへの階段から転げ落ちた薄熙来(はくきらい)前重慶市党委書記(62)。独裁的手法で重慶を「独立王国」に仕立てる一方、日本との関係強化により「次」への実績づくりを進めてきた。薄氏に魅せられた日本の政治家や経済人は少なくない。その証言をたどると、薄氏の巧みな人心掌握術が浮かび上がる。(6面に「13億の転換点」)

市中心部の党委書記官舎。小高い丘にあり、竹林に囲まれる。

2010年夏。ここの主人だった薄氏が日本の経済人を食事に招いた。丸テーブルに薄氏は隣り合わせに座った。酒を無理強いすることなく、会話を楽しんだ。料理が一段落すると、薄氏が誘った。「日本の方はカラオケがお好きですよね。一緒に歌いましょう」。隣はカラオケルーム。

日本側に歌うよう勧めていると、テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」のイントロが流れてきた。マイクを握ったのは薄氏本人。中国語版を歌ったが、あるフレーズだけは日本側の一人一人の目を見ながら日本語に切り替えた。「いまはあなたしか愛せない」。出席者は大喜びだった。

同席者が話す。「薄氏の気配りは相当のものだ。中国で偉くなるにはこうでないといけないのかと思った」

昨年10月30日。二階俊博元経済産業相や林幹雄衆院議員らが市党委庁舎を訪ねた。薄氏の要請を受けた植樹訪中団のメンバーだった。当時の薄氏は、12年秋の党大会で政治局常務委員に昇格し、北京に行く、とささやかれていた。1時間足らずの会談を終え、別れ際に一行が「次は北京でお目にかかれることを祈っています」と向けると、薄氏はその意味を理解したのか、「いや、これからもずっと重慶のために尽くしたい」と控えめだった。

薄氏は90年代から、日本企業が多く進出する遼寧省大連の市長や書記を務めた。2004~07年の商務相在任中、日中間の貿易は急速に伸び、中でも04年は日中貿易が初めて日米貿易を額で上回る象徴的な年となった。

日本の政治家らは競って薄氏とのつながりを求めた。「スマート、さわやか、温厚」。林議員はこう振り返った。目つきが鋭いことが印象に残っているとも付け加えた。

その薄氏にはもう一つの顔があった。独裁者としての一面だ。

市民を動員して毛沢東時代の革命歌を熱唱させ、法を超越したような暴力団一掃運動を推進。毛を思わせる政治スタイルを取り、生活習慣でも昼間に寝て夜に会議をするなど毛をまねた。ネット上では「薄沢東」とからかわれ、重慶は旧蒋介石邸を拠点にした「独立王国」とやゆされた。

結局、独善的手法が胡錦濤指導部の逆鱗(げきりん)に触れた。海外への巨額資産の移転や妻の英国人殺害容疑など、次々にスキャンダルをあばかれ、日本側の期待は裏切られた。

【「13億の転換点」取材班】

(2012年05月17日の記事)