美枝が研究室に戻ったのは、一月の半ばであった。

行動するにあたり華裏那が常に警護しているが、気丈な美枝は周囲の心配をよそに再び活動を開始した。


美枝の予想した通り。

六本木にあったイスロ日本支部のオフィスは、いつの間にか閉鎖されていた。

中も、人っ子一人居ないもぬけの殻となっている。

ドメニコはゲリラ式戦闘ヒューマノイド達をメンテナンス不可の"兵糧攻め”にしたつもりであった。

エリック=ティーチャーのマンションもイスロ名義であった為、こちらもいつの間にか解約されてしまっており。

必然的に、華裏那だけでなくキッド三人衆もエリック=ティーチャーも、仮に一時的であっても真行寺宅へ"居候”することとなった。


一気にゲリラ式戦闘ヒューマノイド「大集合」となり、賑やかとなった真行寺宅であったが、もともと日向と夫婦だった当初からメンテナンス室含め間取りも大き目に造られた邸宅な為。

キッド三人衆、エリック=ティーチャーの四人もの大男達が増えたとて然程窮屈にはならずに済んでいる。


「済まねぇ……」


カイトが申し訳無さそうに頭を下げるが。

美枝にとっては、これ程までに心強いことは無い。


「いいえ、あなた達に居て貰えて。

これ程安心なことは無いわ。

何か不具合があったら、何時でも言って」


キッドもマーフィもケビンも、これまで無愛想なイスロのエンジニアにメンテナンスを受けていたことを思えば。

美枝の慈愛に満ちたメンテナンスは、まるで本当の母親のように有り難いものとなった。

しかし華裏那とエリック=ティーチャーに限っては、可能な範囲であればメンテナンス室の器具を借りながら自らをメンテナンスしていた。


「タダ飯は食わねぇ」


カイトとマーフィはホームセンターへ買い出しに行き、年末にイスロに破壊されて以来応急処置のままだった入口ドアの修理を行う。


驚いたのは、ケビンの料理の腕前だった。

ある朝、華裏那が美枝の朝食の支度をしにキッチンへ向かうと、香ばしいソーセージの焼ける匂いとスープの香りがした。

見ると…………

エプロン姿のケビンが、スクランブルエッグと焼きソーセージ、サラダを盛った皿とコーンポタージュの器を既に完成させていた。

キッチンへ降りて来た美枝も、これには驚いた。

「I could only make simple meals this morning」

(今朝は、こんなのしか出来なかったけど)


ケビンは照れくさそうに笑う。


昼食と夕食分の買い出しも美枝のオーダーを聞きつつ自ら出かけ、それに見合った料理を用意するケビン。

その料理を口にする度に、涙が溢れる美枝。


「…………ありがとう。

ここまでして貰えるなんて」


おかげで自分は洗濯と掃除に専念と決めた華裏那も、思わず笑顔になる。


「ビックリだわ!

ケビンにこんな特技があるなんて」


カイトが付け加える。


「ケビンにかかっちゃあ、マズい料理も三ツ星に変わるってロンドンでも聞こえてたそうだからな」


実質、キッド三人衆の中で最も先に完成したゲリラ式戦闘ヒューマノイドだったケビンは。

実地運用試験の為にロンドンのカフェで厨房の仕事までこなしていた。


華裏那がカイトに言いつける。


「さあて…………ドアの修理が済んだら、明日からアンタとマーフィは掃除と買い物を手伝うのよ」


「ガッテンだ!

カリネキには逆らえねぇ」


そこへ、麻衣が学校から帰宅する。


「ただいま〜…………あれ?

いい匂い!!」


「麻衣、今日からケビンに御飯を作って貰えることになったの」


美枝に、そう教えられて麻衣はカイトとマーフィへ向き直る。


「じゃ!

あなた達は、ニャーミーのトイレ掃除お願い!!」


それを叱る美枝。


「コラッ!

それは麻衣の役目でしょ!!」


麻衣の態度に、居間へ出て来ていたニャーミーも不機嫌そう。


「ニャ〜オ〜〜〜!」


ヤレヤレといった笑みを浮かべるカイトとマーフィ。


「ハイハイハイ!

何でもやらせて頂きますよ!」


真行寺宅に。

久しぶりに笑い声が響いた。


〈マイホーム・完〉


※文中の団体・組織名及び人名は

実在するものと一切関わりありません

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