11/3 エイトの小説 vol.1 | [エイト通信] 北京ダック専門店中国茶房8〜Chinese cafe Eight〜のブログ

11/3 エイトの小説 vol.1

「one scene ~六本木エイト~」vol.1

 外に見える並木は未だ紅くはないが、強く吹く風に巻かれ落ちていく葉が目立ち 始めていた。

 注文したアイスコーヒーの氷を眺めて、少し後悔しながら今度からはホットにしようなどと思い、ストローに口をあてた。



 「お待たせしました」

 他人行儀に声をかけ、向かいの席に座った彼女の口元は明らかに微笑んでいた。



 「ああ・・・どうも」
 
 少し乱暴に返答した僕。

 それは別に有意義な一人の時間を邪魔されたからでも、待たされた事を怒っているからでもない。

 久しぶりに会った彼女が、以前と少しも変わらない笑顔を僕に向けた事に対して、僕も変わらず普段通りの粗暴な男なふりをし、この再会に気恥ずかしさを感じている気持を隠すためだった。

 

 「相変わらず涼しそうだね」と

 寒がりの彼女はマフラーをはずしながら、僕のアイスコーヒーを見て笑う。

 

 僕はウェイトレスを呼び、とりあえず彼女に飲み物を頼ませる。

 当然ホットだが、この店は小さいポットで持って出てくるので、チャイナ服のウェイトレスが片言で

 「コップは二つでいいですか?」$エイト通信 by 中国茶房8:Chinese cafe Eight-茶

 僕の方を見た彼女。

 「二つでお願いします」と 僕が答える。

 

 何もかもが変わらない。

 二人で数えきれないほど来たこの店。

 卑猥なオブジェや大きめにかかった音楽の流れる薄暗い店内。

 あの頃と同じ風景が二人を自然に和ませる。



 ただ一つ違っていたのは、あの頃いつも彼女が右手にしていた、僕のプレゼントした指輪はもうそこにはなく、見知らぬ指輪が彼女の左手に飾られていた事だけだった。



 to be continued

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