11/4 エイトの小説 vol.2 | [エイト通信] 北京ダック専門店中国茶房8〜Chinese cafe Eight〜のブログ

11/4 エイトの小説 vol.2

「one scene ~六本木エイト~」vol.2



 「変わらないね」

 少し開いた窓の外から聞こえてくる通行人の楽しそうに話す声に、僕は目をやりながらタバコの煙りを吐き、テーブルに目を戻すとすぐに、彼女はそう言った。


 
 「・・・」

 僕は彼女の目を見ながら、すぐに返答が出来なかった。

 その言葉が何を指しているのかが分からなかったからだが・・・

 もちろん僕たち二人が恋人同士だった頃に通ったこの店はちっとも変わってはいない。

 だけど、彼女の視線は真っ直ぐと僕に向いていて、その言葉は僕自身の事を指しているようだった。

 彼女と会わずにいた時間はけっして短くはなく、最近は急に太ってきたことや、鏡に映る自分にも大いに年齢を感じてきていた頃だったし・・・

何より一年ぶりに目の前に現われた彼女は、少しも変わらず魅力的だったから・・・

むしろあの頃よりもさらに・・・



「このお店」

と彼女。



「ああ、そうだね」

僕はゆっくりと店内を眺めたあとにそう言って、少し笑ってみせた。



「あなたもね」

 と彼女。



 一拍おいたあとに苦笑いをしながら

「もうオジサンですよ、完全に」

 と答えた僕。

そしてすぐ逃げるようにタバコを口にあてて、もう一度店内へ目を向けながら大きく吸い上げた煙を吐いた。



昔ならこんな時、目を見て名前を言うだけで、二人の気持ちが一つなんだって伝えられた。

だけど今は・・・

僕はタバコの火を灰皿で消しながら、彼女の名前を頭の中で小さくつぶやいた・・・

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