かつて年に2回全品半額の日があった。
僕らはそれを「2丁目バーゲン」と呼んでいた。
バーゲンの日は、開店前から長蛇の列が出来て、
入場制限もあるくらい賑わっていたものだ。
僕も良くその列に並んだが、何故かいつも僕のすぐ前には、
タレントのイジリー岡田氏が並んでいた。
大混雑の店内にやっと入る事が出来ても、満員電車のようにぎゅうぎゅう詰めで、
目的の場所になかなか辿り着けない。
チョロQは手前にあるが、超合金などは一番奥まで行かなければならず、
普通5歩も歩けば着く所が10分以上かかる場合もあった。
社長の声が狭い店内に響く。
「女の子の身体には触らないで下さいね~」
二丁目バーゲンの前日に行くと、
店長と社長が倉庫から持ってきた段ボール箱在庫を仕分けしていた。
前日に行って、欲しい物が置いてある場所を確認しておくと、
当日の混雑時に迷わなくて済むのだが、自分より先に買われてしまう場合もある。
そんな時は、予め自分しか判らない場所に移動しておいたりもした。
また、バーゲンの日は、普段から置かれている店内の商品が
片付けられている事もあった。
チョロQなどはあまり例が無いが、希少性の高い高価な物や一品物、
固定客のついている商品等は、バーゲン前日に奥に隠されていたらしい。
逆に、店頭にはいつも無い超合金がショーケースの外に山積みになっている。
今では貴重なコンバトラーVの超電磁合体が、
バーゲンの度に山積みで、一時は
「2丁目の裏で作ってんじゃないか?」
とまで言われた事もあった。
そんな二丁目バーゲンだったが、僕の欲しい物は、
急いで行かなくても買える物が多かった為、ある時期からは、
夕方の空いた時間に行くようになっていた。
ある日の夕方。
バーゲンセールも一段落して、店内には1人の客がいるだけ。
いつものように空いた時間に顔を出してみた。
バーゲンが行われた夕方の店内は、少し荒れ気味だったが、
普段隠れて見えなかった物が表に出ている事があり、
まさに掘り出し物を見つける事も出来た。
店内を気軽に流し見をしてから、目的のチョロQ置き場へ向かう。
ワールドラリーシリーズ、チューンナップチョロQ、
すえっ子チョロQ、オープンカー、アイディアチョロQ・・・・・
ここで売られているチョロQは、だいたい購入済みだ。
そんな中、珍しい物を発見した。

ランチア・ストラトスターボ、マラソンチョロQ、
そして初めて実物を見るペニーレーサー。
いつも変わらない売り場が珍品の入荷で華やかに見えた。

特にペニーレーサーは未開封のパッケージ入り。
実物を初めて見て少々感激に浸っていた。
チョロQの値段としては4000円と少々高めだが、
未開封のペニーレーサーなど、めったにお目にかかれる物でもない。
しかもバーゲンで半額だ。
以前、鎌倉の友人が中目黒の輸入雑貨店で見かけていたが、
パッケージは無かったと言っていた。
その3点を手にとって、奥に座る長髪の店長に渡した。
「あぁ、そうだこれ片付けんの忘れてたぁ」
「えっ?」
「いや、これ○○君半額じゃなくても買うでしょ~」
「えぇっ?何でですか駄目ですよバーゲンで出てたんだから!」
「あ~そうなんだけどさぁ、普通に買ってよ~」
「えぇ~マジすか?」
「う~ん、しょうがない、まあいいか」
「そうですよ駄目ですよそんなズルしちゃ」
「いやだって解るでしょ・・・うちだって大して儲かんないんだよ」
「解るけどいいじゃないですかこれ1個ぐらい」
こうして、初めてのペニーレーサーは、
下北沢の古物玩具店で購入する事となった。

また、この時はまだ、
このロン毛の店長が、数年後、自分の上司になるなどとは、
考えもしなかった。




