産学つなげる科学教育ベンチャー 理科の実験 出前で人材育成
学生の「理科離れ」が叫ばれるなか、学校への「出前理科実験」を手がける“科学教育ベンチャー”が注目を集めている。リバネス(東京都新宿区)では教師向けの実験研修や先端科学技術を生かした農林水産業活性化にも一役買っている。バイオ業界などは、技術開発にしのぎを削る一方で、人材育成は後手に回ってきた面もある。同社の取り組みが、業界の人材育成の底上げにもつながりそうだ。
リバネスは2002年、「サイエンスの面白さを多くの人々に伝えたい」として理工系大学生ら15人が創設。6年間で1万5500人の生徒に対して出前実験を行ってきた。最近では、企業の地域貢献活動が広まるなか、経済産業省の「社会人講師活用型教育支援プロジェクト」に採用、企業の研究現場と学校教育の現場をつなぎ、将来の産業界を担う人材の育成を目指す。同社が手がけるプロジェクトに参画する企業のなかには、植物の疾病予防に取り組む出光興産や、乳酸菌飲料を開発するカルピスなどもあり、教材の共同開発を行っている。
最近の科学界の大イベントも追い風だ。国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」における初の民間有償利用制度を活用し、植物の種を宇宙へ打ち上げ、保管、回収し、全国の小・中・高校で実験教室を行う「宇宙教育プロジェクト」や、下村脩(おさむ)氏のノーベル化学賞受賞で話題になっているオワンクラゲの蛍光タンパク質(GFP)を利用し、「光る大腸菌を作り出す遺伝子組み換え実験」を手がけるなど話題づくりにも余念がない。
これら実験を支えるのが、大学・大学院生らによるインターンシップだ。同社には毎週末、周辺大学のインターンシップ生が集い、教材開発を手がけている。実験室での研究が中心だが、分かりやすく自分の研究内容を伝えたり、コミュニケーション力を高めようと切磋琢磨(せっさたくま)している。
リバネスの事業展開は教育現場にとどまらない。島根・隠岐諸島の海士(あま)町では若者の人口流出を環境教育の活用で食い止めようとする「海士人間力大学」構想を進める。同町ではベンチャー企業と共同で魚介類の水分の氷結晶化を抑え、瞬時に凍結する技術の導入にもこぎつけた。
理系人材育成には、文部科学省なども予算を増額しているだけに、ビジネスとしての商機がある。リバネスの取り組みは理系人材の新たなキャリアパスを開拓する意味でも注目されそうだ。
出典:フジサンケイ ビジネスアイ