$チョコマカオのブログ





今日はお父さん、お母さんと動物園にお出かけです。わっちゃん、朝からソワソワ。

「帽子は白いレースのふりふりのついたのにしようかな。お母さんはピンクのにしたらって言うんだけどなぁ。」

わっちゃん、なんだか迷ってしまいます。でも、決めました。

「やっぱり白いレースのにしーようっと。」

いっぱいおめかしをして、帽子を持って居間へ降りて行きました。するとお父さんとお母さん、なんだか様子が・・・・。


「どうしてもだめなの?」

「そうなんだ、僕でなきゃ処理できないことなんだ。」

「困ったわねぇ。」


お父さん、わっちゃんに気付くとすまなさそうに言いました。

「あ、わっちゃん、ごめんね、急に仕事で出掛けなくちゃならなくなってしまったんだ。でも、わっちゃん、おりこうさんだから、お母さんと一緒に行けるよね。」

わっちゃん、もうこんなこと慣れっこです。ほんとはちょっぴり寂しかったけど言いました。

「うん、大丈夫、お母さんと行って来るね!!」



動物園はいっぱいの人ごみで賑やかでした。人ごみのずっと向こうにキリンさんの頭が見えています。でも、わっちゃんのお目当ては決まっていました。そう、ライオンです。なぜかわっちゃん、ライオンが大好きなのです。

「お母さん、はやく、はやく!!」

お母さんの手をせかすようにライオンのところへやってきました。

「うわぁー、お母さん!ほら、ライオン!!」

「そうね、大きいわねー。」

ライオンは寝そべっていましたが、やがてむっくりと起き上がるとのっそのっそと歩き始めました。こちらの方に近付いて来ます。

「あー、お母さん、来たーーー!!」

わっちゃん大喜びです。

ライオンは時折ゴロゴロとのどを鳴らすのですが、低く大きな音で迫力満点です。わっちゃんライオンのそんなところも大好きでした。



あくる日、お昼近くになってお父さんは帰って来ました。お仕事で遅くなってとても疲れているようでした。わっちゃんは動物園のお話をいっぱいしたかったけど、がまんしておとなしくしていました。
お父さんはシャワーを浴びてそのままたたみのお部屋で眠り込んでしまいました。

わっちゃんは静かにご本を読んでいました。そうしてしばらくすると、時折、お父さんのいびきがゴロゴロ聞こえます。

「あ、ライオンだ。」

わっちゃん急いで押し入れから枕を引っ張り出すとお父さんにくっついて寝っ転がりました。なんだかいい気持ちです。
たたみのお部屋をのぞいたお母さん、そんなわっちゃんをみつけると言いました。

「あら、わっちゃん、なにしてるのかなー?」


「ライオンとお昼寝!!」









チョコマカオのブログ



くもの子は、くる日も、くる日も水中歩行に励み続けました。雨の日も、風の日も、毎日、毎日、一日も休むことはありませんでした。


もう、何年経ったことでしょう、くもの子は、もう水たまり程度の大きさでは物足りない程になっていました。普通の大きさの湖など鼻歌まじりで渡りきってしまうまでになっていました。

くもの子は、人づてに聞く、水面がどこまでも続くという海に挑戦してみたいと考えるようになっていました。

「海、か・・・。」

海をめざして旅を続けることにしました。



そして、やがて見渡す限り水面の続く海ににたどりつきました。

「すごい!!これが海なんだ。広いなー!!」

くもの子はためらうことなくどんどん水の中に入って行きました。

「うわぁ~~!!気持ちいいぃ~~!!」


海の中は今まで鍛錬してきた池や川と違って、とてもきれいでした。青色で透明な水中ずっと向こうに大きな昆布がゆらりゆらりと揺れているのが見えます。近付いてみると昆布は海底の大きな岩に生えていました。岩肌には色とりどりの小さな海藻がゆらゆら揺れていて、波間から差し込んだ太陽の光があたりいっぱいキラキラ照らしていました。くもの子にとってそれは夢の国のようでした。

王冠のような形をしたピンク色のイソギンチャクが岩にくっついています。広がったりすぼんだりして不思議に動いています。
あちらには星の形をしてカラフルなヒトデが岩にしがみついています。時折もぞもぞ動きます。

いくらながめていても飽きることはありませんでした。くもの子は我を忘れて夢中で海底の探検を楽しんでいました。もう挑戦のことなどすっかり忘れてしまっていました。


そうして、どれくらいの時が過ぎたでしょう。やがてくもの子はなんだか息苦しいことに気付きました。

「いけない!!時間のことをすっかり忘れてた!!」

くもの子はあわてました。夢中になっているうち、岸からはるか遠く離れたところまで来てしまっていました。いまさら引き返したところで、もう息が続きそうもありません。

「どうしよう・・・」

その時でした。水面からするするとくもの糸が降りて来たではありませんか。

「よかった!!だれか助けに来てくれたんだ!!」

くもの子は夢中で糸にしがみつきました。くもの子は糸に引かれてぐーんと上ってゆきました。

「まるで、あの時のようだ。」

水面から持ち上げられ空中にゆれる糸にしがみついたままそう思った瞬間、何かが違うことに気が付きました。
しがみついた糸は、細くて長い、そしてしなやかなさおの先端にくくりつけられています。さおは二本足で立ち上がった大きな男の片手に握りしめられています。そしてもう一方の手が自分をつかみ取ろうとしているのです。大きな手には軍手がはめられていました。

「いけない!!」

くもの子はあわてて糸を離しました。そして、そのまま水面に落ちると再び海の中へと沈んでゆきました。

「危ないところだった・・・。だけど、困ったな、息が・・・・・!?。あ、あれ!?」

苦しかったはずなのに、どうしたことでしょう、普通に息ができています。くもの子は恐る恐る深呼吸をしてみました。大丈夫、あたりまえのようにできています。
くもの子は何度も何度も深呼吸を繰り返しました。

  ” ありえないことが起こっている。しかもこれは現実なのだ。 ”

くもの子に突然おとずれたそれはまぎれもない奇跡でした。大きな驚きとともに、くもの子の胸は言いようのない喜びに満たされてゆくのでした。




 
エピローグ

この時から、くもの子はずっと海の中で暮らしています。いっそう鍛えあげられた身体にはムチムチとした筋肉と固い甲羅が付きました。やがて、成長とともに、くもの子の両手にはハサミが生えて来ました。それはまるであの日以来抱き続けたくもの糸へのコンプレックスを断ち切る為のものであるかのようでした。

それからもう一つ、以来、歩き方も横歩きに変わったということです。










解説
くもの子に起こり得た奇跡の源流をたどれば必然的に神の存在に行き着くことになります。くもの子は、かつて友人がそうしたようにつかんだ糸が神の子である人間によって垂らされたものであった為に、不意に神とかかわり合うこととなります。一見 ”自己の希求” こそがこの作品のテーマであるかのようですが、くもの子の意志と神の意志が交錯したところに起きた奇跡こそが重要なもう一つのテーマであると言っていいでしょう。神の御心にて。 注:ミノミココロ






付録 : くもの糸(エピソード)



「ねえ、カニっておいしいよね。」

「うん。」

「毛ガニおいしいよね。毛ガニ、好き!!」

「味はそうだよね、けど面倒くさいところはいやだな、手がベシャベシャになるし・・・。タラバガニだったらさ、ぱくぱく食べられていいんだけどな。」

「そーだね、毛ガニ、チクチクするしね。でもカニってなんであんなに足いっぱい生えてんのかな?」

「足いっぱいあるほうがいっぱい食べられていいじゃん。」

「それはそうだけど・・・。 ねえ、くもも足いっぱい生えてるよね、・・・カニってくもなの??」


「えええええぇっ!!?? う、うん、そ、・・そーかも、だね・・・。」







チョコマカオのブログ



くもの子はどこまでも歩いて行きました。あれからどれくらい経ったでしょう。
お父さんの言葉が頭をよぎります。

「くもには天分がある」

自分の天分とはなにか、それを求めての旅立ちでした。随分遠くまで来ました。



昼夜降り続く雨を倒木の陰でやり過ごしたあくる日の事でした。いつかの水たまりと同じように大きな水たまりができていました。友達が溺れかかったあの水たまりです。

  ”溺れかかったとはいうものの彼には未知に挑む者としての強い意志があった。”

くもの子はそのことがとても気にかかっていました。

「僕にもやれるだろうか。」

岸辺に立つと不安でくじけそうになります。助けてくれる者など誰もいません。それでも、くもの子は意を決したように水たまりの中に向かって歩いて行きました。

「冷たい・・・」

かまわず進んで行きました。やがて全身が水中に沈みました。やはり陸の上とは勝手が違います。うまく進めません。でも、くもの子はあきらめませんでした。
夢中で前に、前に進みます。

「苦しい!!でももう少し・・・。あともう一息・・・。」

くもの子は気が遠くなって行くのを感じました。口からは泡が出ています。

「く、苦しい・・・」

お父さん、お母さんの顔が浮かびます。お父さんの声が聞こえます。

「負けるな!!」

お母さんの声も聞こえます。

「がんばって!!」

くもの子はもうろうとした意識の中でもう一度足をけりました。そして、もう一度。・・・そしてもう一度。・・・もう一度。

やっとの思いで向こう岸近く迄たどりつくと顔が水面の上に出てどうにか息をすることができました。
くもの子は陸に上がるとくずれるように倒れ込んでしまいました。そしてそのまま気を失ってしまいました。



まぶしい太陽の光に気付くと、陽に照らされた身体はぽかぽかととてもいい気分でした。そして、やがて大きな達成感に満たされてゆくのでした。いい心地です。みるみる自信が湧いてくるのを感じました。

「これだ!!」

くもの子のひらめきは、やがて強い確信となってゆきました。