朝夕はようやく涼しくなったとはいうものの、日中はまだまだ暑い。
郊外の新しいショッピングモールは休日ということもあって熱気でむせ返っている。こういうところはだいたいのところ苦手なのだが、まあ、どういったものか一度はのぞいておこうということで赴いたのだった。
なるほど、ずらり立ち並ぶ多様なセンスの店はなかなか面白い。そして、そうした店の群れの中に一際目を引く店がある。
英字表記のその店は、そば屋のくせにディスプレイも粋で、もともとしゃれ好みの私の琴線に触れた。
「よし、暑気払いだ!!」と店内に入ると、なるほど、おしゃれな店員に実にスマートに迎え入れられた。
「いらっしゃいませ」
まるでそば屋には不釣り合いな、それでもさりげなくしゃれた濃紺のソファーに腰を下ろすと私は言った。
「鴨南蛮お願いできますか。」
唐辛子たっぷりかけて、ふーふーすする鴨南蛮を思うとそれだけでどっと汗が吹き出して来る。
「はい?」
「鴨南蛮お願いします。」
「は?・・あ、あの・・・・。」
「あのね、鴨南蛮、置いてないの?」
「あいにくと私どもにはお取り扱いがございませんでして。」
ふむ、なかなか丁寧な言葉遣いに圧倒されてしまいそうだったが気を取り直して続けた。
「あのさ、それはないんじゃないの? だってこちら鴨が売りなんでしょ?」
「ほんとうに申し訳ございません。」
なぜだ!? 私にはどうしてもあきらめがつけられなかった。
「だいたいさ、どうして鴨南蛮が出せないの? サルバトーレ・フェラガモ でしょ。」
「・・・・・・・」
