ツェッペリンの設計した船体は非常に成功し、その結果「ツェッペリン」という語は慣用的にあらゆる硬式飛行船のことを指すようになった。硬式飛行船は外殻の支持構造をもつ飛行船であり、ガス圧で外形を維持する軟式飛行船 と区別される。
ツェッペリン飛行船は、アルミニウム
などの軽金属
の外皮を被せた枠組構造内に、空気より軽い水素
ガスを詰めた複数の気嚢を収容している。乗客や乗員の乗る居住空間(ゴンドラ)が枠組構造の底部に取り付けられている。動力源は、数基のレシプロエンジン
である。
硬式飛行船の設計が優れている点は、浮揚用水素ガス袋と、船体構造とを分離した点にある。従来の軟式飛行船は、ガス袋そのものを船体としていたため、変形しやすくなり、高速飛行は不可能であった。硬式飛行船はアルミニウム合金
の多角形横材と縦通材で骨格をつくり、張線で補強し、その上へ羽布(麻または綿布)を張って流線形の船体を構成し、ガス袋を横材間に収めた。
このような構造をもつ硬式飛行船は、船体の外形を保持することができ、飛行機よりは遅いものの、駆逐艦
には追尾できない高速を発揮した。飛行船は実用的な空の輸送手段となった。
硬式飛行船の優れたもう一点は、大型化を可能にしたことである。飛行機と違って、ツェッペリン飛行船の浮力は寸法の3乗である体積に比例し、また、構造重量は寸法の3乗以下にとどめることができるので、大型であるほど搭載貨物を増大できる。
ツェッペリンNT[は、1990年代
にドイツのツェッペリン・ルフトシフ・テヒニーク社によって開発された飛行船。
その名の通り、ツェッペリン型硬式飛行船を最先端の技術で現代に継承することを目的としており、外皮膜を新素材の化学繊維、骨格を炭素繊維
で組み上げ軽量化しているほか、エンジン配置や制御方法を工夫し、従来の飛行船よりも地上要員を少なくして運用できるなどの次世代飛行船の名にふさわしい特徴を持つ。
全長75m、乗員2名、乗客12名、巡航速度80km/h、最大航続距離900kmの性能を持つが、将来的には積載能力や航行能力の拡大も可能。