【1】セミナー会場で見た“婦人服”商談スペース
 
 1》オフィス・ビル内の仮設ショップ?
 
 地域の異業種交流会で“世話役”をされているAさんが、
 “経営セミナー”に出かけた時のことです。
 
 セミナー会場に早く到着し過ぎたAさんは、
 何気なしにビルの中を散策していました。
 
 すると、あるフロアーに季節ものの婦人服が、
 急ごしらえのショップのように展示されているのが見えたそうです。
 
 それどころか、いくつかの会議室には、
 内部にぎっしり“おしゃれな服や小物”が飾ってありました。
 
 部屋の中から驚いたような目を向ける“係員”を無視して、
 Aさんはどんどん“ショップ”の中に入って行きました。
 
 あれこれと“見学”していると、しびれを切らしたのか、
 一人の“係員”がAさんに声をかけてきました。
 どうやら注意をしにやって来たようです。
 
 
 2》そこは“商談会場”だった…
 
 実は、そこは、来年の婦人服の商談会場だったのです。
 そこでは、婦人服メーカーが小売店を集めて商品を見せ、
 小売店はその中から仕入商品を決めるわけです。
 
 会議室の隅にはテーブルがあり、確かに何人かが“商談”をしていました。
 どう見ても婦人服の流通関係者には見えないAさんが入って来て、
 メーカーの担当者も当初は警戒したようでしたが、
 その後Aさんに親しみを感じたのか、“商談”の仕組みを教えてくれました。
 
 来年流行する服が、今、目の前にあるわけです。
 
 
 3》それは簡単な仕組みなのか…?
 
 話を聞きながら『デザイナーが予め決めた流行が宣伝され、
 それをメーカーが作って小売店が売る…、いい仕組みだなあ』と、
 Aさんはまず思ったそうです。予め流行を作った上で、
 ユーザーを先導するなら、こんなに楽なことはありません。
 ユーザーニーズを分析する必要もないからです。
 
 しかし『こんな造られた流行に振り回される女性は…』と
 非常に否定的な気持ちになった時、ふと、この商売の難しさに気付いた
 Aさんは言います。
 
 
 【2】“売れ筋”選定眼を経営勉強会のテーマに…!
 
 1》次回の異業種交流会テーマが決まった…
 
 “今流行している、昔のブルマ(女児の体操着)に似せて
 裾に丸みをもたせたスカート”などのように、はっきりしたものを作ると、
 確かにユーザーには訴求しやすいでしょうが、ではその中から実際に
 “どのスカート”を選んで仕入れるかとなると、
 必ずしも簡単ではありません。
 同じ種類のデザインの商品でも、色や微細な装飾の差などで、
 売れるものと売れないものの差が出るからです。
 小売店側には選定眼が不可欠です。
 
 そんな思いの中でAさんは、ふと次回異業種交流会のテーマを、
 “売れる商品を選ぶ目:ユーザーニーズの見分け方”にしようとひらめき、
 話をしてくれる人を探すことにしました。
 
 
 2》勉強にならない“感性”主義者?
 
 さっそく知人から二人の講師候補者の紹介を受けましたが、
 一人はやたらに“感性”を強調するのみでした。
 
 『自分が一番好きな服を選ぶと、不思議にそれが売れる』と主張するのです。
 多分事実なのでしょうが、聞いていて勉強になりません。
 “感性”主張者の中には、確かに天才肌の人もいますが、
 大部分は『その場その場の思いつきで行動しているに過ぎない』と、
 Aさんは常日頃から警戒していたのです。
 
 もう一人の候補者も、一見“感性”主義者のようでしたが、
 少し様子が違っていました。
 
 
 3》仮説を作るだけでも意味があるのに…
 
 その講師候補は、まず店に来る常連や最近来店して印象に残った人など
 一人一人時間をかけて想起するのだそうです。
 そして、その人たちに“どんな服が似合うか”を考えます。
 
 しかも、あの人はきっとこれを買う、
 別の人はこれを買うと仮説を作ると言います。
 その仮説はパソコンにデータとして残します。
 
 そうして、決めやすかった服から仕入れるそうです。
 そこまででも十分意味があるように感じますが、
 その人には“更にその次”がありました。
 
 仕入れる時に“仮説”を作るだけではなく、その仮説を細かく“記録”に
 残し、実際に売る段階で、それを一つ一つ“検証”して行くのです。
 
 その“概要”は次のようでした。


  ~ 以降、次回に続く ~