【3】もう終わりにしたい“200X 年問題”的視点

 1》時代の“危機”ではなく“現実的日常”
 
  実際のデータに触れてみると、
  2007 年問題は大きな高齢化の流れの中では、
  その傾向が瞬間的に強調される“一時の現象”に過ぎないと分かります。
 
  少なくともコンピュータが誤作動を起こすような
  スリリングな問題ではないのです。
 
  しかし、これを機会に、たとえば2040 年には北極海の氷が解けてしまう
  (米国立大気象研究センター)などとして特定の年を追うのではなく、
  この辺で捉え方自体を変える必要があるように思うのです。
 
  つまり、もはや人口変化も環境変化も、問題や危機ではなく、
  現実に起きている日常的変化なのだと考えるべきだということです。

  たとえば異常気象も、むしろ異常なのではなく気象のトレンドの変化
  (温暖化という日常的変化)であり、
  危機や問題として特別視するのではなく、
  日常の中で普通に対応しなければならない段階に来ているのです。


 2》目に見え始めた“見えない問題”
 
  ところが、そうした感覚の中で、
  気象変化ではなく“高齢化”の問題で
  『変化が現実の日常になり始めて、気付いたことがある』
  指摘する経営者がおられます。
 
  その経営者は『機械化などによって、
  高齢者の業務範囲が極端に狭くなりはしなかったが、
  精神的なものが大きく変わり、それが新たな問題になっている』
  と言うのです。
 
  肉体の衰えとしての高齢化問題には前々から取り組んでいても、
  目に見えない心の問題には、気付くのが遅れたということです。


 3》“心の問題”って?
 
  その“心の問題”について、
  A社長は『分かりやすく表現するのは難しい』と付け加えながらも、
  こんな指摘をされました。
 
  『私が若い頃は、先輩はバリバリ働いていた。
  それで自分も当たり前のように働けたものだ。
  しかし今は、どうしても高齢者が“余裕”のようなものを持ってしまう。

  それは落ち着きという点ではよいのだが、なかなか組織の活気には
  つながらず、若い世代に昔のような懸命さが出てこない。
 
  それが今後、どのように影響するか考えると不安になる』

  という指摘です。


【4】年齢を超えて広がる経営者の“新た”な問題?

 1》経営者ご自身にも言えること!
 
  それは経営者ご自身にも言えるかも知れません。
  すでに60歳が近いその経営者も、
  若い頃のように無条件で事業成長のために働くという意欲を持てない
  と言われるからです。
 
  しかし、そうした目に見えない意欲の低下は、短期的には
  “余裕”を生み出しても、長期的には事業衰退の原因を作ってしまう恐れが
  小さくありません。
  事業は短期的な問題より、ボディーブローのように効いてくる
  “積み重ね”で、そのパワーが大きく変わってしまうからです。
 
  もし現役を続けるなら、現在60歳の経営者の皆様にも、
  あと10年や20年程度の事業期間は十分に残されています。
 
  事業の寿命が30 年を切ったと言われる今、その期間は
  事業にとっては非常に長い
ものだと受けとめるべきかも知れません。


 2》意欲の減退が招いたこと?
 
  たとえば今年57歳を迎えられる寿司屋の店主の方は
  『数年前店舗改装の話があったが、必要を感じなくて実行しなかった。
  その後、店の老朽化もあって、客足が遠のいた気がする。
  こんなに元気なので、まだまだやりたいが、この年齢で“赤字”を
  心配しながら続けるのもせつない気がする』と言われます。
 
  先の経営者の例が、高齢化すると将来への対応意欲が薄れ、
  それが事業継続の基盤に悪影響を与えるという話だと理解すれば、
  この寿司屋でも同じことが起きているのだと分かるのです。

 

 3》比較的若い経営層にも…
 
  更に最近では、社会全般の傾向を受けてか、
  比較的若い経営者層でも、かつてのようなエネルギッシュな経営より、
  プライベート優先の姿勢が大きなウエートを占めつつあるようです。
 
  もちろんガツガツしない経営は、顧客側にも落ち着いた感覚を持つ高齢者が
  増える
中で、今後ますます重要になるでしょう。
 
  しかし、それでも事業である限り、基盤強化の手を抜くべきではありません。
  事業意欲を忘れることは危険なのです。
 
  ただ、そんな“ゆとり”と“活力強化”を
  両立させる方法
があるのでしょうか。
 
  それは、マネジメントに計画経営視点を導入することで、
  ずいぶん容易になるのではないかと思うのです。

【5】“ゆとり基盤”と“活力基盤”の両立を狙う!

 1》計画経営?
 
  計画経営手法は、長期の経営だけではありません、1年半年
  あるいは3ヵ月単位で業績や活動の目標とその実現方法を定め、
  計画的な行動を組織内に導入することです。
 
  特に最近では、向こう1年を“月別に予算”化して、今月は予算を超えた、
  今月はもう少しがんばらないと予算に達しないという具合に、
  予算達成を活動の尺度にする企業経営者が増えています。
 
  それは、経営者ご自身に
  『昔の昨年対比のような単純な目標がないと意欲が出ない』という傾向が
  あるのに加え、もう少しがんばらないと予算を実現できないという
  現実を前にすると、組織内に“共通の目標”が生まれ、
  皆で力を合わせやすい
からなのだそうです。


 2》予算管理の意欲高揚効果
 
  がむしゃらだった時代には『成長』という合言葉で、組織は自然に
  一枚岩になれましたが、人口さえも減少する今日では、多様な価値観の人が
  “協力”し合える基準のようなもの
が不可欠なのかも知れません。
 
  そして、その基準こそが“今年度はここまでやろう”と、
  あらかじめ決める予算管理なのです。
 
  更に単年度ではなく、たとえ概算ではあっても、
  数年先までの見通しを立てる習慣がつくと、今度は、
  短期的な変化“だけ”で一喜一憂しない“長期的経営観”を実感でき、
  基礎的なエネルギーを保持したまま“落ち着いた”経営を
  実践しやすくなるはずです。その長期計画の“終点”を、
  ご自身の“引退時”に置く経営者も増えつつあります。


 3》変化を的確に受けとめる経営
 
  時代はもはや変わっています。
  年齢を問わず、経営者の皆様が“高齢化社会の生み出す文化”
  なじんでしまうのではなく、それらを前提条件にして、
  その上でどう経営するかを、当然のごとく考えるべき時期に、
  今来ているのかも知れません。
 
  計画経営はそんな経営視点の一つで、世の中の変化を的確に受け入れ、
  不足もやり過ぎもなく淡々と経営する姿勢確立
の一方法です。
 
  今後も、こうした視点や方法を含め、
  様々な経営情報をお届けしたいと考えます。