新聞紙上では、昨年8月以降、
 政府も日銀も「日本経済は回復の兆しにある」と報じております。

 しかし、私は全くそうは思わない。

 実のところ、大企業の一部だけは情勢も回復し、景気はいいようだが、
 中小企業の倒産は、増加しているのだ。

 帝国データバンクの発表によると、
 昨年8月の倒産件数を見ると754件で、前年を79件上回った。
 しかも、その内容は販売不振、売掛金回収難、不良債権の累積など、
 いわゆる『不況型倒産』が全体の73・9%に達したのであった。

 推察するに大企業は、好決算を迎えても下請である中小企業に対し、
 何らかの還元をすることはなく、原油の高騰や原油を使った
 各中間加工品メーカーや輸送会社が、値上がり分を付加できないで、
 倒産或いは廃業を余儀なくされているのが原因である。

 しかも信用調査会社帝国データバンクの数字は、
 廃業や任意整理などは含まれない。

 更に、厄介なのは、昨年4月に施行された「個人情報保護法」という
 どっちつかずの法律だ。

 これは、約束手形が不渡りとなり、取引停止処分となっても各金融機関は、
 その情報を共有できるが、これらの情報は、「個人情報に抵触する」という
 理由で公表されないのである。

 このことを政府は、知っていて
 「景気は回復した」などと唱えているのだろうか、不思議でたまらない。

 このように、自主廃業、任意整理、夜逃げ、経営者の自殺による倒産、
 手形不渡りによる倒産などを含めると、その数は膨大なものとなる。

 特に、日本の中小企業の占める割合は、約255万社ある企業の90%だ。
 特に、「名古屋は景気がいいでしょう」と地方都市に行くと聞かれるが、
 実際に私の周りには、給与が上がったとか、臨時賞与を貰ったなどという
 景気の良い話は聞いたことがない。

 バブルの崩壊以降、平成8年頃から、政府や日銀は、何十回と
 「景気は底を迎えた」とか「景気は回復に向かっている」と報道しているが、
 企業に対するアンケートが示すとおり、
 企業人の70%は、景気が回復したという体感が全くないと回答している。

 本当に大切なことは、景気が回復しようとしまいと、
 景気に踊らされない経営基盤を作ることが経営にいちばん大切なことである。