さて、本書は68年のリイシュー(reissue;再発行)版登場の場面からスタートします。レス・ポールのコンサートに来たローリング・ストーンズとの出会いが発端となり、レス自らギブソン社に再発売の話を持ちかけた、ということです。意外と商魂逞しい…でなければ、発明なんてやってられないか!
そのレス・ポール本人については巻末には1章が設けられ、2009年のレス・ポール死去までが紹介されています。その中に1ページ、メリー・フォードに関する記述もあります。再婚の後、糖尿病が原因で53歳で亡くなったとのこと。
その他、レコーディング、"バタヤン"田端義夫氏も使ってたパーソナルなどのバリエーション・モデルの紹介、レオ、ジミー・ウォレスをはじめとする「ディーラースペシャル」、ジミー・ペイジではじまるアーティスト・モデル等々、マニアには興味深い記事が満載です。
さて、ギブソン社は、1986年にヘンリー・ジャスキヴィッツ(日本語表記はユシュケビッチとかさまざまだけど)率いる投資家グループに買収されて以降、再建が進みました。
この人は1953年ニューヨーク生まれ、58歳。ゼネラル・モーターズの高等専門学校でエンジニアリングを学び、地元の夜間大学に通った後、ハーバード・
ビジネス・スクールでMBAを取得、投資銀行勤務を経て1986年に友人達と500万$でギブソンを買収します。本人自身もギター・プレーヤーだとのこ
と。社員を大事にせず自社商品に愛着を持たない会社には、こういった文化的な要素を持つ企業は経営できないでしょう。(前オーナー・ノーリンの親会社は
ビール等の製造会社で生産効率追求一辺倒だった)
この本では彼を「アルゼンチン人とアメリカ人のハーフ」と紹介していますが、Wikipediaではポーランド系とあります。名前からするとやはり東欧系では?
本書は、日本で発行されているいろいろなレスポール本とは違い、関係者へのインタビューなども充実もしており、その歴史を勉強するには十分な内容があります。高いけど、前作とあわせて買っておいても損はないはず。