本家フェンダーの「テレキャスター・ベース」は、オリジナル・プレシジョン・ベースの復刻版として、1968年から79年まで生産されました。途中、72年には仕様変更がありPUもハムバッカーに変更されています。
51年 PRECISION BASS
68年 TELECASTER BASS
68年 Paisley Red
71年 TELECASTER BASS (カバー付)
72年 TELECASER BASS
元のデザインがダブルカッタウェイのプレシジョンベースなので、「テレキャスター」という名称にも関わらず、それっぽい雰囲気が薄い。やっぱり、シングルカッタウェイの、あのデザインじゃなきゃ!
そういった需要は確かにあるのかもしれませんが、製品化されたものは、これが意外とない。
Tomson?(TEISCO?)
G&L ASAT BASS
写真上のベースはおそらく60-70年代の日本製。ヘッドのロゴはトムソンと読めます。以前取り上げた"FUNNY TELE"の特徴などからすると製造元はテスコではないか?
下はぐっと下がって、G&Lが1989年に発表したアサットベース。同社のテレキャスタイプのギター、アサットをベースにしたもの。USA製品以外に、ライセンス生産による日本製もあります。現在も発売中。
G&Lはミュージックマンと同様、フェンダー社の創始者レオ・フェンダーが関与した会社ですが、前2社で手がけなかったシングルカッタウェイのテレキャスベースが、なぜG&Lに至って初めて市販されるようになったのか? また、テレキャスター登場から60年という長い間に、どうしてテレキャスのベース版がほとんど世に出なかったのか。
推察するに、シングルカッタウェイのベースはストラップで吊ったときのバランスが良くない、ということかと。
シングルカッタウェイとダブルカッタウェイのベースを重ねてみると、その差がよく分かります。赤い丸印の距離の分だけネックが体から離れるため、特にローポジションが弾きづらくなります。
「こんな使いづらいものを製品化しちゃいかん!」というレオ・フェンダーの戒めがあったのかどうだか、フェンダーとミュージックマンでは出さなかったものが、G&Lは1991年に彼が亡くなる前の最晩年、第一線を退いている時期に出しちゃった、というところでしょうか。
レスポール、フライングV、サンダーバード(ファイアバードのベース版)、EB-1など、過去にストラップピンを引っ掛けるツノの短い(あるいは、無い)ベースが他にも存在しましたが、いずれもそれほど成功してませんね。あ、ヘフナーのバイオリン型ベースは別格か。これはなんと言ってもビートルズ無くしては存在しえません。