前回に引き続き,似せようとして似なかったテレキャスターたち。
これらは,60-70年代初め,コンピューター制御の工作機のない時代,あるいはそういう機械が中小企業には高値の華で手の届かなかった時代に,恐らくオリジナルの写真あるいはコピー品などを参考に「とりあえず雰囲気さえ似てたらいいんだよ」てな感じで作られていたものと思われます。また,採算面との相談で他機種とのパーツ共通化を余儀なくされたり技術的に難しいものは簡略化されてたりと,その姿には微笑ましくもちょっと哀しい味がありますね。
国産ELKカトラスCT-410?
70年代初期のカトラス。軽量化のためボディバックを円形にくり抜き,スポンジシートで塞いである。ビグスビー風ビブラートアーム付き。他にファズ付モデルもあった。エルクは国産ギター完全コピー合戦の陰で,77年頃にひっそりと製造を中止する。
国産BURNS SG-28
このバーンズは60年代後半製の東京・原楽器店のブランド。製造元はテスコらしい。リアPUまわりの分割ピックガードはなくてもいいジャン!という感じでご愛嬌。ジャガー,ジャズマスター風のアーム付テールピースとの組み合わせも妙。28は定価28,000円の表記。
TEISCO製
TEISCO製
TEISCO製
Fender JOHN5モデル
同じメーカーの製品でありながら,それぞれテレキャスっぽいというだけで,パーツ等にはあまり共通点がない。
上は,外見はテレキャス風だが,ブリッジやテールピースは本家とは全く異なる。
中は,ラージヘッドのテレキャスター・デラックス風。
下のヘッドはどこかで見たような…そう,フェンダー・ジョン5モデルのデザインによく似てる。ひょっとすると彼はテスコのギターを少年期に所有してたかどこかで見てたのかもしれない。
国産Thomas
トーマスはトムソン(Tomson)と並ぶ二光通販のブランド。基本的には楽器店では販売されなかったため,雑誌等で知名度が高かった割には実物を見た事がないという,幻のギターだった。複数の製造委託先があり,本機は70年代テスコ弦楽器製,ヘッドが異なるだけで上記テスコの一番上の製品と全く同じである。(テスコは本機を米シルバートーンにもOEM供給していたようだ)。
二光通販については,90年末には音楽事業から撤退したとのこと。シンコーミュージック刊「JapanVintageVOL6」でわりと詳細な特集があった。
国産GUYATONE LG-20
60年代国産エレキの雄,グヤトーンにはテレキャスのコピーは少ないようである。写真は70年代初期のモデル。カタログには堂々と「フェンダーテレキャスターモデル」と紹介。定価20,000円。
当時の国内向けグヤ製品ではテレ,ストラト,モズライトいずれのコピーモデルも同じジャズマスター・タイプのビブラートを備えていた。ブルーのマッチングヘッドの本機はブリッジプレートを省略しているため,ピックガードが縦に長い。
国産PEARL PE-3162
パール,72年のカタログから。これもブリッジプレートを省略してビグスビー風テールピースを装着。ピックガード右下には筆記体の"P"の字が。
ARIANA(ARIA?)製
恐らくマツモク工業製アリアのバリエーション? フロントPU1個,エスクワイアとは逆の形。
IBANEZ製
この個体は指板に塗装剥がれによる汚れが。一度塗装を剥がして汚れをつけたのかも。ポジションマークが部分的に消えてる。これもブリッジプレートがカバーの形に切り抜かれている。
独HOYER製
ホイヤーは1874年に設立されたドイツの楽器メーカーで,現在も継続中。当初はフルアコが主流だったが,1967年以降はソリッドボディ・エレキギターの製造も手がけている。
写真のやたらとネジ数の多いテレ風ギターはリアPが独立しており,ブリッジプレートは単なる飾りに。ブリッジ駒は6ウェイ。ジャックが載っているせいもありコントロールパネルが長い。