
昼休みに立ち読みした雑誌で中山ラビ「ひらひら」を見かけ、近くのCDへ。昔,NHKだったかで洪栄龍バンドをバックに歌っていた「夢のドライブ」が急に気になったのです。そこにベスト盤はあったものの,やっぱりオリジナル盤が欲しいと,帰りに馴染みの中古CD店へ。一件目は全くなく,二件目でも目当ての品は見つからず,念入りに探すうちに行き当たったのが寺山修司監督の映画「田園に死す」のサントラ盤でした。
70年代末に上京して,3本立て300円(だったか?)の名画座で初めてこの映画を見ました。角川文庫の一連の作品で寺山修司の書き物には馴染みがあったものの,映像に接したのはこれが初めてでした。
高校時代を過ごした地元ではアングラ映画を上映する場所は皆無。人口の1%にマーケットが限られるマイナーな趣味でも東京なら10万人,でも5万の町ではわずか5百人,標準外のものは商売にならない。

「大工町寺町米町仏町老母買う町あらずやつばめよ」
母親からの独立と断ち切りようのない親子の絆がテーマと思われるこの自伝的映画は,刺激的な短歌のスーパーと朗読で始まります。
かくれんぼ,恐山,イタコ,間引き,サーカス,一寸法師,柱時計,縫合修復された写真…。
青森と東京新宿を舞台に,寺山修司がよく取り上げるモチーフが映像化され,いたるところに脈絡なく配置されることで大いなる違和感を醸し出しています。
シュールレアリズムの世界では有名な,いわゆる「手術台の上のミシンと雨傘の偶然の出会い」を地でいく演出です。江戸川乱歩やつげ義春の「ねじ式」などと同じ感触があります。
残念ながら現在DVDは絶版のようで,マイナーな作品のためレンタル店にもないかと思いますが、機会があればぜひ一度観てほしい作品です。
追記 ; 本作DVDは,4月23日に低価格版が再発売されました。
YouTube→田園に死す(予告篇) 惜春鳥 田園
74年アート・シアター・ギルド(ATG)配給。
恐山のガイドまで網羅した詳しい解説サイトがありますので参照ください。

さて,サントラ盤は,天井桟敷の音楽担当だったJ・A・シーザー(日本人です。)が手がけています。ピンクフロイドとブラック・サバスに影響を受けたという「ご詠歌ロック」,どことなく線香のにおいがします。
音楽だけ聴いても十分楽しめますが、やはり映像あっての音。
映画のハイライトは,雛壇が流れて来る嬰児の川流しシーン,寺院本堂での童貞喪失シーン,そして最後のどんでん返し,この3つではないかと思いますが,それら映像を支える音楽は,児童合唱団などをうまく配置し,よりインパクトを大きいものにしています。
音楽にあっては,人の声は最大の表現ツールであるということを改めて認識させられます。

サントラ・ジャケットの挿絵は,映画でも美術を担当した花輪和一。映画化にあたって,寺山個人の中にある思い出を抽き出し登場人物を一般化するためにイラストを描いてもらったとか。
余談ですが,ちびまる子ちゃんに登場する「花輪和彦」くんの名は,花輪和一から取られたらしい。