
バルブクリアランス(タペットクリアランス)調整。
単にバルブといえば、通常はエンジンの中の燃焼室内の空気を出し入れする、
インレット(吸気)バルブやエキゾースト(排気)バルブのことを言います。
これらのバルブ(弁)はカムシャフトのカムによってロッカーアームを介したりして駆動されているが、
エンジンが温まったとき、バルブが熱膨張を起こして伸びてくるので、
その分を考慮した隙間をバルブ~カムまでのあいだのどこかで作ってやる必要があるのです。
(くどくなるので詳しくはWikipediaさんなどにお任せするとして…)
・・・このバルブクリアランス(弁すきま)というものが、
エンジンの稼働時間を積んでいくうちに磨耗によってだんだんと広がってゆくことがあります。
特に吸気側のバルブクリアランスが広くなってしまうと、
その分バルブの開く量が少なくなってしまって、エンジンが吸気できる空気量が減ってしまう。
そうすると、エンジンにはどのような悪影響が起きるのか。
・・・あなたのバイク、最近スピードの伸びが悪くなったりはしていませんか?
それはひょっとすると、バルブクリアランスの増加が原因かも知れませんよ。
■用意した工具
・ラチェットハンドル又はスピンナハンドル(お好みで・・・)
・10mmソケット
・プラグソケット
・ラジオペンチ又はプライヤー(プライヤーのが力が入るがクチバシが短すぎるかも)
・ハンマー(ホース外し用・・・堅いので)
・5mm・六角棒レンチ
・シックネスゲージ
余裕があれば
・タペットアジャスターレンチ
・10mm・六角棒レンチ
・??mm・ソケット(ごめんなさい。間違っているかも。たぶん14mm~19mmぐらいまでのあいだ。)

シリンダヘッドカバーを外します。
まず。一番最初にすることは、車両の右側に立ってご覧のホースを引っこ抜く。

こいつはおそらく、クリップをずらしたところで素手では抜き取ることができないでしょう。
なので画像のようにハンマーとの合わせ技を使っても良いと思います。
ホース末端をなるべく傷つけないようにね。
ちなみにこのホースの役割ですが・・・
繋がっている装置の形状的に。誰か情報ぷりーず。
二次空気供給装置ですね。(エアインジェクション)

画像の赤枠で囲んだふたつのボルトを取り除いて、シリンダヘッドカバーに突き刺さっている
パイプを外してください。

・・・したら、今度はこのボルト。先ほどのものもですが、2面幅は10mmです。
このボルトを取り除くとシリンダヘッドカバーが外れます。

外れづらかったら多少マイナスドライバーなどでこじって。あくまで、多少!

シリンダヘッド内部です。
ついに露になりましたよ!CBF125の心臓部。
ここまで内部機構が見えるようになったら、いよいよ本格的な整備に入ってゆきます。
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弁すきまを測ることが出来る状態に持っていくための作業です。
まず、プラグを外して・・・


画像の場所のボルトを、5mm・六角棒レンチで取り除いてください。
このボルトが外れると・・・

見えますか?内部に横向きで「T」とか「F」とか書いてある点があるんです。
(点検窓!)
5速に入れてタイヤを回転方向に手で回し、
「点検口の周りに掘られているスリットとTマークがぴったり重なる位置、なおかつロッカーアームがIN、EXともにカタカタする」
状態にしてください。
(Tマークが見えているけどバルブがカタカタしていないときはもう1回Tマークが見えてくるまでタイヤ回しなおし。)
上記の状態になりましたか?これが「圧縮上死点を出す」作業です。
上記の状態になりますと圧縮上死点が出たことになりますので、いよいよ弁すきまの測定・調整に入ります。
※WARNING!※
圧縮上死点ではないのに弁すきまの調整に入ってしまうと、最悪エンジンがかからなくなります。

これがシックネスゲージ。厚みの記された金属の板(リーフ)が無数に組み合わされたこれを、
バルブ(正確にはバルブステム)と、ロッカーアームとの間に滑り込ませることによって
弁すきまを測定してゆきます!

CBF125エンジンの弁すきまの基準値はユーザーマニュアルに載っていますが・・・
基準値
インレット(吸気) 0.08mm
エキゾースト(排気) 0.12mm
これが、今回私が測定してみると吸・排気、ともに0.17mmまで広がってしまっていました。
ゆうに、吸気側では0.09mmの誤差!100分の1mmで管理されているすきまにとって、
この誤差はとても大きいものです!

この画像でメガネレンチをかけているのがロックナットとなっているので、
まずそこを緩めてから、その上に四角く突き出ている物体(アジャストスクリュ)を回して、
バルブクリアランスを調整してください。
<考察と解説>
びしっと基準値に弁すきまを調整しなおすと、私のCBF125は調子を取り戻しました。
これがなかなか劇的な変化で、調整以前は10km以上も最高速が落ちてしまっていたことに…。
0.09mmの差が、こんなにも最高速度に影響を及ぼすものなのです。
■整備方法について
圧縮上死点を出すのに今回、「ギアを5速に入れて手でタイヤを回す」
という方法で行いましたが、実はこれは必要な工具が足りなかったためであり(汗、
上死点の点検窓の下にもうひとつある窓(タイミングホールキャップ?)を開けると中にボルトが出てきて、
六角レンチなどでエンジンのクランクシャフトを直接回すことが出来ますので絶対そっちのがラクです。
必要な工具・<余裕があれば>に記載したもの。点検窓を開くのに10mm・六角棒レンチ。
クランクシャフトを回すのは、だいたい14mm・17mm・19mmあたりがあればいけると思われる。
バルブクリアランス・アジャストスクリュを回すのにも、もっと便利な道具があります。
タペットアジャストレンチ。これから挑戦しようとしている人はぜひとも調べてみて。
それと、おわかりかとは思いますがこれまた測定値が狂うので
測定はエンジンが完全に冷えている状態で行ってください。
■シックネスゲージ
すき間を測定する工具。その構造は上に示したとおりでありますが、使い方は
たとえば0.16mmのリーフをすきまに挿入したときに、何の抵抗もなくスルスルと
リーフが引きぬけてしまうようであれば0.16mmよりもすきまが大きい。
逆に、全くもってそのすき間にリーフが入らないようだとすきまが小さい…という具合。
すきま測定に関する記述はWikipedia参照。
■プラグを外したのはなぜ?
中でピストン位置を動かすときにプラグが刺さっていると完全な密閉空間なので、
クランクシャフトを回すのに非常に力がいる。ましてや、今回みたくタイヤを手で回すなんて日には・・・。
■「圧縮上死点」について
エンジンの仕組みから解説することになるから詳しいことはググって貰った方が全然正確かとは思うのですが…
バルブクリアランス-弁すきまを測定するのには、どちらのロッカーアームも
バルブを開いていない状態にする必要がある。つまり密閉状態。
それがエンジンが「圧縮行程」に入っているとき。
4ストロークエンジンの4つの行程「吸入」「圧縮」「燃焼」「排気」の中で、
通常「弁すきまは圧縮上死点で測定するもの」と決められている。
エンジン内部を調整するという意味で「エンジンチューン」と言っても良い作業です。
よくチューン=チューンアップ=性能を向上させる、という意味で捉えられることが多いけど。
こちらは本来の意味での「チューニング(調律、調整)」ですね。
このような言葉で表現するととにかく「難しい」と敬遠されがちですが・・・
自分の「"愛"車」であるからこそ、隅々まで自分で面倒を見れるようになって見ませんか。
決して一筋縄ではいかない作業ではありません。ここまで読んでいただけた貴方も、是非。