1972(昭和47)年6月26日、東京の新橋第一ホテル新館3階304号室で、熊本県八代市の歯科医 谷脇キヌ子さん(当時37歳)がベッドの上で全裸で殺されているのが発見されました。
遺体には、死後に性的暴行を受けた形跡がありました。
 

発見したのは、被害者と一緒に八代市から上京していた歯科医の男性2人とホテルの従業員です。

 
谷脇さんと男性歯科医2人は、前日から霞ヶ関ビルの12階で開催されていた歯科医向けの講習会に参加するため、2日前に東京に来ていました。
谷脇さんが朝になっても起きてこないのを不審に思った2人が、ホテルの従業員と共に彼女の部屋を開けてみると、谷脇さんは変わり果てた姿でベッドに横たわっていたのです。
 

警察は、谷脇さんが犯人を部屋に招き入れたように見えることから顔見知りの犯行と考え、まず熊本から一緒に上京し同じホテルに宿泊していた男性歯科医2人を事情聴取しました。ところが遺体に遺された体液から判明した犯人の血液型「O型-非分泌型」が2人と合わず、また部屋や彼女のバッグに付着していた指紋とも一致しなかったのです。

次に、谷脇さんが毎月の講習会で上京するたびに「情事」を重ね、事件の前日も「旅館」で会っていた不倫相手である東京の先輩医師、そして彼女が趣味であるダンスのクラブで知り合った男性、さらには谷脇さんが事件の日に購入代金を支払う予定だった歯科器具の営業マンが疑われたましたが、結局彼らも血液型や指紋が一致せず、またアリバイが成立して容疑が晴れました。

その後捜査の進展もなく、事件は未解決のままです。









谷脇さんと犯人は東京の酒席、それもかなり開放的な場で出会った。


犯人は谷脇さんのことを知っていて、興味本位で近づいた。


若く初々しい男性に言い寄られ、谷脇さんもついその気になった。


その日かなり飲んでいた谷脇さんは、犯人に介抱されながら情事に及んでしまった。


そして犯人は身の上や、金銭に困っていることなどを語った。


ありふれた不幸話であったが、可哀想に思った谷脇さんは犯人にお小遣いを渡すことにした。


犯人はとても喜んだ。その姿も可愛く見え、谷脇さんはその後も何度か犯人と情事を交わし、そのたびにお小遣いをあげていた。


しかし犯人はだんだん調子に乗り、あけすけに金銭を要求してくるようになった。


うんざりした谷脇さんは犯人を避けるようになった。東京に来ても、そのことを犯人に知らせることはなくなっていた。


お小遣いをあてに生活していた犯人は困窮した。


なんとか谷脇さんに会い、以前の関係に戻りたい…


そう思い、講習会の日を調べ待ち伏せするようになった。


その日、好都合なことに一人でホテルへ向かう谷脇さんを発見。


部屋へ入る直前に声をかけ、驚く谷脇さんを抱えるように押し入った。


また前のような関係に戻りたいと話す犯人に、谷脇さんははっきりとNOを突きつけた。


予想外の反応に犯人は逆上。


ころすだけでは気が治まらずに、恥辱を与えた。


谷脇さん自身、犯人との付き合いは誰にも言っていない。そのため容疑にかかることもなく、犯人は東京で生涯を過ごした。