大阪府和泉市に住む、岡崎良子さん。 2024年9月、夫の洋さん(82)が午後に自宅を出たまま、行方がわからなくなった。洋さんは6年前から認知症を患い、自分の名前は言えたものの、住所や電話番号は言えなかったという。

「『俺はもう家へ帰るんや』とは常に言っていた。『ここが自分の家だよ』と言っても、『いや、違う。別に家がある』と」

 洋さんがいなくなったのは今回が初めてではない。良子さんは常に注意を心掛け、門扉にはカギを掛けていたそうだが、その日に限って忘れてしまった。「2人でこたつでテレビを見ている間に、私がうつらうつらしてしまい、その間に出て行ってしまった。それを一番悔やんでいる。とにかく早く帰って来てほしい」と、涙ながらに話す。

 洋さんは歩く際、左肩が下がり、右手の位置が胸元にくるという特徴があったという。自宅マンションの防犯カメラからは、当日の服装は黄色のノースリーブに黒の短パン、黒のスニーカーを履いていたことがわかっている。ただ、財布や身分証などは何ひとつ持っていなかったそうだ。

 マンションを出た後は徒歩で移動し、約250m離れた交差点でも防犯カメラに捉えられていた。坂を上がっていく後ろ姿も映っていたそうだが、その後の足取りはわかっていない。







洋さんは普段の生活に満足していなかった。


それは家族のせいではなく、自分自身と葛藤していたからだ。


自分はここにいていいものか、いるべきではないかもしれないと思っていた。


家を出たのも突発的なものだった。妻である良子さんのことはぼんやり認識していたものの、外へ出たい衝動に駆られてしまった。


なぜかは分からないが、ここにいていけないと緊迫感に襲われたからだった。


とにかく急いでいた。小走りに近い速度で歩いていく。


今すぐに家族と再会し、家に戻ることは難しい状況。


水のある場所の近くにいる。


苦しんでいたり、悲しんでいたりする様子はなく穏やかな気持ちでいる。