2004年2月9日午前10時過ぎ、佐賀県鳥栖市飯田町の九州自動車道の側道にあたる市道で、福岡県大刀洗町三川に住む会社員の入口和俊さん(当時24歳)の軽乗用車が側溝に脱輪した状態で停まっているのを捜していた母親(当時60歳)が見つけた。

車内を見ると、入口さんが助手席に座っており、頭に黒いポリ袋をかぶせられた状態で亡くなっていた。発見されたとき、車のキーはエンジンの鍵穴に差し込まれた状態だった。 母親は9日の朝に入口さんの勤務先の会社から欠勤していると連絡があったため、行方を捜していた。

司法解剖の結果、入口さんは後頭部を鈍器のようなもので激しく殴られて陥没骨折しており、死因は脳挫傷とわかった。顔面にも多数の傷があった。死亡推定時刻は8日午後11時から9日午前3時頃と見られている。運転席や助手席から血痕が見つかったが大量ではなく、狭い車内で殺害された可能性は低いと見られている。また、車内には入口さんが普段持ち歩いている財布や携帯電話がなかった。



犯人は被害者と親しい関係だった。


仕事や家族の話など、取り留めもなく話せるような気が置けない友人だった。


少なくとも、被害者はそう思っていた。


犯人も友人だと思っていたが、時が経つにつれてだんだんと関係性が変わっていくような気がしていた。


仕事も家族も、どうにも上手くいかない自分。

対して被害者は家族にも恵まれ、仕事も順調だ。


恋人までいる。


心の中で、黒い感情が大きくなっていった。

嫉妬。


それを認めたくなくて、被害者に辛く当たることもあった。


頑張ってるのになにも上手くいかない!なんでお前だけ順調なんだ?


被害者は辛抱強く励まし、時にはアドバイスもした。


しかし犯人にとってそれは、高みの見物、上から目線だと感じてしまった。


もちろん被害者がそんな人だとは思っていなかった。

自分のことを心配してくれていると分かっていた。


それでもその日は、感情を抑えられなかった。

お酒を飲んでいて勢いもあり、黒い感情を全てぶつけてしまった。


我に返ったときには、友人は息絶えていた。


なんてことをしてしまったんだ…


何度も自首しようとした。でも出来なかった。

警察が訪ねてきたら、正直に話そう。


しかし警察は来なかった。疑われもしなかった。


僻みに塗れたこんな自分を励まし、応援してくれていた友人を自分の手で消してしまった。


罪悪感と絶望の中、悲しみに暮れる犯人。


精神を病み、生存している可能性も高くない。