▽▲▽▲ 現在、ブログ休暇中です▲▽▲▽

物語の再掲のみ更新予約にて続けております。

訪問のほうも休ませていただいていますので、

ご了承くださいませm(_ _)m

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やがて姫を追って3騎が駆けてきた。最後に食料を載せた馬車が追いつき、馭者や騎手のひとりはアルドー兄弟と親しげに挨拶を交わした。どうやら同じ “ 夢の護り手 ” らしい。

ハールが目を丸くして、
「いったい、お父上の眼力はどこまで及ぶのでしょう。ここまで行き届いたお気遣いをいただくとは…」
と言うと、フェラリスは少し困ったような顔をしてもの言いたげなようすを見せた。ケルドーとヴィトは顔を見合わせ、ヴィトも口を挟みたそうな表情になったが、
「そして、我々のために姫君みずからこのような場所にまでおいでくださったこと、深く感謝いたします」
と言葉を続けられたフェラリスが沈黙を選ぶのを見て、彼もまた口をつぐんだ。


フェルスからの援助者たちは乗ってきた馬を一行にゆずり、空になった馬車に乗り込んだ。
「ハールさま」
フェラリスが狭い窓から首を伸ばす。
「兄はまだルマを疑っておりません。宿場などの話からシオールに向かったものと思っているようです。あるいは、ずっと気づかないかもしれませんが…」
少女の花びらのような唇にほのかな笑いが浮かんだ。
「もし気づかれた時には、ルマはフェルスの属国のようなものですから、摂政王子の意向を無視するのはむずかしいでしょう。兄が気づかぬうち、フェルスからの早馬が飛ばぬうちに…お急ぎください」
「摂政…とは」
ハールが眉根を寄せた。
「ええ。父が目覚めませんので、隠しおおせるはずもありませんし、兄は事実を公表して《王に代わって政務を執る》と宣言いたしました。ドゥニアは…、あの兄の裁量に任されることになったのです」


それではフェルスを逃れても無駄ではないか。

ただの疑いだけでなく、最初に会った時からあの痩せた青年の目に宿っていた敵意が追ってくるのであれば、コル島に捕吏が乗り込んでこないとも限らない。そこで抗えば国同士の問題になり、戦につながるかもしれなかった。

フェラリスはハールの頭に浮かぶ未来図を読み取り、
「いま逃れてくだされば、わたくしや重臣が諫めます。兄は…良くも悪くも強硬な支配者ではありません。戦よりは不問に付すことを選び、やがて自分の間違いに気づくでしょう」
おだやかに言った。

大人びた態度に感心しながら、ハールはもう一度フェラリスに礼を言って与えられた馬にまたがった。よほど強い馬とみえて、まだ全身にみなぎる力を感じる。
「よい馬を選んでくださった、これならば兄君を出し抜けましょう」
快活な言葉を残し、ハール一行は駆け出した。岩とひねこびた雑草ばかりの草原にフェラリスはしばし馬車をとどめ、馬影がはるか彼方に溶け消えるまで見送っていた。



 

 

ハールたちの旅程は一気に楽になり、二日を経ずにルマの王宮に着いた。さいわい、フェルスからは何の知らせも届いていないらしく、一行は「世継ぎの恩人」という扱いのままで、むしろ、先日断られた祝宴に代わる宴会を開いて歓待しようとするシュブールを振り切るのにハールは苦労した。
「父の加減が悪いようで…」
心ならずも嘘をついて、一行はようやくクル港から船出することができた。わざわざ見送りに来たシュブールへ船上から頭を下げ、ほっとしたハールは胸いっぱいに潮風を吸い込んだ。


「しまった」
突然叫んだハールに3人が緊張する。
「いかがなさいました」
「トゥーリッドから君に、押し花を預かってきていたんだ。王宮の客間に置いたままにしてしまった。トゥーリッドに山ほど文句を言われるな」
言われたヴィトを含め、全員が笑いだした。
本人を連れて帰るのだからいいだろう。ふいに乙女らしくなった妹の面影をハールは思い浮かべ、それはいつしかフェラリスの美しい笑顔と混然となっていった。

 

 

 

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今回をもちまして再掲は終了です。

 

先月半ばから体調が悪く

なかなか戻ってこれずにおりますが、

お伺いできていないにも関わらず

「いいね」をくださった方々、

お訪ねいただいた方々、

皆様に厚く御礼申し上げます。

 

また、物語の読者様には、

長文での復帰が少々むずかしいので

しばらくのご猶予をお願いいたします。

 

少しずつですが、

近々戻る心づもりでおります。

今後ともよろしくお願いいたしますm(_ _)m

 

 

 

 

くま ずっと水瓶のままだった(笑) うお座

※画像はフリー画像です