傍から見れば、自尊のかたまりのようにも見え、無神経なほど我が強く、恋愛で言えば次々に獲物を求める肉食獣に似て、メラニー救助や生家の再建のような良い目的ならば、すさまじい意思の強さを持つように思われるスカーレット。
しかし、責められると狼狽えて泣き出したり、些細な中傷で強い衝撃を受けたり、無神経どころか彼女は常にぴりぴりと神経を張りつめているように見えます。
そして一昨日挙げた「度外れた逃避行」も、(無意識裡に)彼女はひたすらアシュレイの“採点”が恐ろしかったのではないかと思うのです。
スカーレットにとって、アシュレイは気になって気になって仕方ない“審判”でした。
もしもメラニーやお腹の子どもを助けそこなって、アシュレイの目に浮かぶ失望を見るくらいなら、失敗したと最重要の審判に告白する瞬間を迎えるくらいなら、死んだほうがましだったのではないか、と。
スカーレットの、タラ農場への激しい執着も同じ理由であるように思います。
地獄の逃避行中、スカーレットは「お母さまの許へ帰りさえすれば」と念じています。
母エレンの許へたどり着きさえすれば、あとはすべてエレンが助けてくれると信じていました。それほど絶対的に母を尊敬していた、と言えるでしょう。
ところが、やっとの思いでたどり着いてみれば、戦争で農場は荒らされ放題。父は正気を失い、そんな中でも慈善に努めたエレンは、看病した貧困層の娘に病気をうつされて亡くなっていました。
敗者の南部人には厳しい税金(戦争賠償金)が突きつけられますが、荒れ果てた農場にはもうお金はない。そこへ乗り込んできたのは、母に病気をうつした娘です。
回復して北部の成金の愛人となった彼女は、無神経にも、カネにものを言わせて「憧れの金持ちの家」に住もうと下見に来たのでした。
スカーレットは激怒。しまいには大嘘をついて妹の婚約者を略奪し、結婚してその小金を手に入れるという、詐欺と身売りに近い真似をしてまで「お母さまを殺した女」から生家を守り抜きます。
この時のスカーレットの脳裡には、亡き母が“審判”として存在したはずです。
母の前で、農場も父も家族もすべて立派に守り抜き、あなたに劣らず切り盛りしています、と胸が張れるのか、あなたを死なせた女(=スカーレットの主観)に何もかも奪われ穢されました、とみじめな報告をするのか。
そこにスカーレットは我が身を捧げました。極言するなら、失望されないためなら、よくやったと褒められるためなら、命も人生もいらないということです。
我が強いどころか、自尊どころか、他者に脅かされない独立した自我があるのだろうかと思うような、強い意志というより強迫的症状と言ってよいような…わたしには、彼女はそうした脆弱さを抱えているように見えます。
その反面、彼女のビジネスのやりかたには、母の眉をひそめさせるものがあります。
現に、父ジェラルドは「お母さんならそんなことはしない」と指摘して、スカーレットを悩乱させています。
父が正気での言葉なら、
スカーレットは発狂並みにキレるか、折れてたかも?
このあたりにスカーレットを読み解く鍵があるとわたしは考えています。
明日は買い出し日につき休みます