ふり返ってみたら、3月はちょうど水曜日にいろいろあって、アダルト昔話を1回しかやっていませんでした。ファンの皆さま、申し訳ございません(って、ファン人口どのくらい?? 笑)。

今日は性愛に直接関わる話ではないのですが、クライマックスが下がかっていて、やっぱりそこらの「読み聞かせ」なんかではハジかれてしまうだろうお話。

花も恥じらう…なんてとっくに忘れた婆さまならではの “豪快なホラ” が大好きです。


○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

むかしむかし、あるところに婆さまと息子がおった。息子は嫁をもらったが、この嫁は年寄を邪魔にして、何かと婆さまに難癖をつけ、あることないこと悪口ばかり並べていた。
息子も初めは「そんなことを言うものではない」と嫁をたしなめていたが、嫁の言うことを聞かないと不都合なことが多いものだから、とうとう嫁の言いなりに我が親を山へ捨てに行くことにした。
嫁はそれを見送りながら「山へ行ったらカヤを刈り集めて小屋を作って婆さまを押し込め、火を付けて置いて来てくれ」と頼んだ。嫁の言うとおり、息子はカヤの小屋を作って母親を押し込め、火を付けて逃げ帰った。

息子が逃げたあと、婆さまは死にたくないから小屋から這い出した。といって、行くところもないので、仕方なく燃える小屋の前でその火にあたっていた。やがて夜になると、山奥で火明りを不思議に思った鬼の子どもたちが様子を見に降りてきた。そして婆さまの側まで来て、一緒になって火にあたった。
婆さまはしゃがんでいたものだから、鬼の子のひとりがその内股を覗いて不思議そうに、
「婆さま、そこは何だ」
と訊ねた。婆さまは何気なく、
「ああ、これか。これは鬼の子どもを食う口だ」
と答えた。ところが鬼の子たちはすっかり真に受けて、驚きおびえて騒ぎ出した。そこで婆さまはわざと大股をひろげて、
「さあ、鬼のガキども、取って食うぞ!」
脅かすと、鬼の子たちは
「婆さま、許してくれ。代わりにこの《打ち出の小槌》という宝物をあげるから。これは願い事を言って地面をトンと叩くと、何でもかなえてくれる宝物だ」
と言う。
「よし、それなら取って食うことは許してやる」
と婆さまが言うと、鬼の子たちは喜んで、婆さまに《打ち出の小槌》を渡して山奥へ戻っていった。

婆さまは鬼の子にもらった《打ち出の小槌》を持って、
「ここに千軒の町、出ろ」
と言って地面をトンと叩いてみた。すると、にぎやかな町がぞろりと出た。次には町の真ん中に行って、
「ここに大きな館、出ろ」
トンと叩くと、立派なお屋敷が出た。さらに婆さまは人だの馬だのいろんな店だの次々に出して、新しい町の領主さまになった。

婆さまがいなくなった後も息子夫婦は貧乏なままで、木を切って薪を作り、あちこちに薪を売りに行って暮らしを立てていた。
ある日、見たこともないほど大きくて栄えている町へ行き、これならたくさん買ってもらえるだろうと一番大きなお屋敷を訪ねたところが、えらい領主さまが捨てた婆さまだったからびっくり仰天。
「あの婆ぁが…」
と嫁はひどく口惜しがって、自分も領主さまになりたいと息子にせがんだ。息子はまたも言いなりに、それでは婆さまと同じようにしようと山へ連れて行き、カヤを刈り集めて小屋を作り、嫁を入れて火を付けた。嫁は焼け死んだ。

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


この “口” は魔よけになるそうで。
ペタしてね

注意当ブログの「昔話」は渓美居堂くまらによる「再話」となります。原話を大きく変更してはいませんが、表現などが異なる場合があります。また、再話として書かれた物語は渓美居堂の管理下のものと認識しておりますのでご留意ください。