水曜日、アダルト昔話のお時間ですウインク


昔は「奉公(ほうこう)」という勤務形態が普通でした。
「奉公」とは住み込みで働くことで、たいていは「年季奉公(ねんきぼうこう)」といって、10年を上限とした期限を切り、先に親へ渡された給料を「借金」と見なして労働で返す形になっています。

このほか、「出替り奉公」といって、春(全国的に旧暦2月2日がほとんど)を交替の時期として、1年替わりの短期の奉公をくり返すパターンもあり、この場合は給料後払いもあったようです。

どちらにせよ、たとえば店員であったとしてもそれだけをやればよいわけではなく、雇った家の家事雑用や子守など何でもさせられ、24時間プライヴェートな時間がない「住み込み」という形態自体、現代人には苛酷に感じますよね。

それが当たり前の時代でも、家が恋しいのには変わりなかったことでしょう。そんな若い奉公人の切なる思いが、とんだ勘違いを招いたお話です。


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むかしむかし。あるお金持ちのところに若者が奉公しておった。
若者はもうずっと家に帰っていなかったので、今年は久しぶりに暇をもらおうと思い、主人に申し入れると、主人もこころよくそれを承知した。
そして明日はいよいよ出替りの日、数年ぶりに故郷へ帰る若者は「給料はいくらもらえるんだろう、家族に何を買って帰ろうか」などなど考えてしまって、なかなか寝つかれなかった。
すると隣の主人の部屋から、
「お前もいくか、わしもいく」
という声が聞こえ、奥さんが
「あなたもいかれますか、わたしも、もう、いきます」
と答える声が聞こえてきたものだから、若者はびっくり仰天、
「旦那さまがたは、この夜中にどこへお出かけになるんですか。わたしは明日には家へ帰るんですから、お出かけになるなら、給料のことはわかるようにしといてくださいよ!」
と大声で叫ぶと、隣の部屋はしーんとしてしまったそうな。

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英語なら問題なかったのに(笑)。
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注意当ブログの「昔話」は渓美居堂くまらによる「再話」となります。原話を大きく変更してはいませんが、表現などが異なる場合があります。また、再話として書かれた物語は渓美居堂の管理下のものと認識しておりますのでご留意ください。