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本日、3月24日。
主に動物目当てでブログネタを見ていて、このお題を見たら胸に湧いてきたことがありました。

実はサナトリウム育ちです。
といっても自分が結核療養所に入っていたわけではなく、母が療養所を前身とした病院の看護師だったんですね。で、病院の敷地内に看護師のこどもを預かる保育所がありまして、そこで幼少時のひとときを過ごしました。

保育所は古くなったサナトリウムの建物を消毒して活用。そのため、普通の病院の部分ではなく隔離されている結核エリアの端っこにあったんです。だから収容所のような金網で囲われ、外に出ることは許されていませんでした。

サナトリウムは海辺のような空気がきれいなところに建てられます。病院も海に近く、そのためかぐるりを松林が囲んでいました。病院内の分校で学ぶ、隔離された子たちのための小さなグラウンドも、松林の中にありました。

保育所そのものの思い出はまたいつか別に書くかもですが…
とりあえず、成人して就職して何気なくこの頃の話をしたら、同僚が「孤児院で育ったみたい」と同情して泣いてくれて、驚きました(笑)。たぶん無資格だと思うので保育係と書きますが、彼女らにされたことを数十年後に至って母に話したら、やっぱり泣きました。そんなとこでした。

わたしは特殊事情で、保育所で預かる年齢をわずかに過ぎても預けられていたので、保育係が率先して仲間はずれにしてくれました。早生まれなだけなのにね(笑)。それでもかまわず、仲よくしてくれる男の子がいました。

不思議なことに、顔も名前も憶えていないのです。あとから、幻だったんだろうかとか、想像の友だちだったんだろうかとか、自分でも自分の脳を疑いましたが、わたしの名だけなかったお誕生月の張り紙を一緒に見た記憶は悲しみとともに刻まれていて、彼は実在だったはずです。

大人の都合だけで動かされていつも具合が悪く、いじめられた恐怖、放置された恐怖が重なって記憶が混乱したり、脱け落ちたりしています。

そんな中でひとつだけ、本当に明るくて明るくて、スコーン!と音がしそうだった青空がくっきり見えます。金網をよじ登れないトロくて虚弱なわたしのために、どうやってか彼が開けてくれた戸口から駆け出した時の青空。

みんな逃げたかったんです。わっと半数以上が開いた戸口から脱走して、てんでに逃げ散り、保育係が大騒ぎで走り回っていました。心から笑いました。

彼と手をつないで、一番遠く、分校のグラウンドまで逃げました。
ふたりで固い赤土の地面にしゃがみ込んで、松かさを拾って積んだり、松葉を並べたり、松葉の引っ張りっこをしたりしました。

幼かったからだけではなくて、どきどきするような、その後の恋愛感情とつながっていくような感覚はなくて、「初恋」とは少し違うかもしれません。

でも、当時のわたしには彼といるその時間がすべてだった。彼がすべてだった。
今でも、松に囲まれた赤土の小宇宙は、現実世界とはまったく違う色合いでわたしの中にあります。




全部思い出してみたら
自分でも重かったわ。
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