本日、7月18日。

お中元で思い出したのですが、いただきものをまた別の方に差し上げる時「おすそわけ」と言いますよね。この意味はどういうものでしょうか。




これは昔、高貴な人が衣類を使用人に譲ってやる風習があったことから、という説があります。まさしく衣の裾をわけてやったわけで、天然素材・すべて手作業の時代の衣類や布は貴重なものだったからでしょう。




けれども、これだと、おすそわけとは「上位の人が下々にくれてやる」の意になってしまい、あげる側が「おすそわけ」なんて言ったらたいへん無礼なことになってしまいます。




しかし、これには他説もあって、裾というのが衣類の一番下であることから、末端の「取るに足りないもの」の意を含み、謙遜して「つまらないものですが…」という意味で使われたというもの。また「少し」の意を含め「少しばかりですが…」という心情の言葉という説もあります。




種々の語源について辞書や研究書で調べていた頃には、ひとつめの「上位から下々」説しか見たことがありませんでした(もちろん、わたしの浅学ゆえの可能性はありますが)。また、これは書写したものがないのでうろ覚えですが、最初はひとつめの説のとおりで、世の中にひろまるうちに「裾=下めのもの=謙遜」というイメージがまさってきて、ふたつめのように転化したという、あいだをつなぐような解説もあったと思います。




個人的には、古くは「上位から下々へ」の意があった可能性が高いように思います。考えてみれば、この場合の差し上げるものはもともと他人様からのいただきもの。それをいきなり「つまらないもの」と言ってしまうのは、気配り日本人としてはちょっとおかしい気もするからです。




また「裾=つまらないもの」というのが謙遜というより文字どおりの意味で、本来は目上の方・上位の方に差し上げるものには使ってはならない言葉だったとの説もあります。ということは、やはり「上位から下々へ」というのが本来の使いかたということになります。




まあ、井上ひさし氏がおっしゃるとおり「言葉は多数決」で、たくさんの人がその意味のつもりで使っていれば、その意味で通ってしまうし、そっちへ変わってゆくものなので、今さら目くじら立てる方もいないとは思いますが。




ただ、けっこう意味を考えちゃう方もあるようなので、もしも気になる方がいらっしゃるなら「お福分け」という言葉を使うのもいいかもしれません。他人様から自分のところへいただいた「福」を、あなたにもお分けします…ということなら、まったく問題がないのではと思います。




延々と書いといて何ですが、テキトーなわたし個人としては、贈り物のやり取りだけでもあれこれ気を遣うのに、添える言葉まで面倒だとは…と思わなくもないです(笑)。素直に「喜んでいただけると思って」「おいしいからどうぞ」なんてのも明朗でいいよな、とも思います。




どのみち、欲張って誰にも分け与えず、天罰くらうタイプのわたしには関係ないか(笑)。






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