本日、4月22日。
誕生花は起源も意味も不明で、それぞれの花の割りふりも異説がありすぎ。そのため一回しか扱ったことがないのですが、Wikipediaによれば、4月の誕生花のひとつは「わすれな草」なのだそうで。
この花の名はドイツの伝説によるものとされています。
ドナウ川のほとりに咲く花を乙女ベルタが欲しがったため、摘もうとした恋人の騎士ルドルフはあやまって川に落ち、溺れて死んでしまう。ルドルフの最期の言葉は「わたしを忘れないで」。ベルタはその言葉に従い、生涯この花を髪に飾った。悲恋といえば悲恋、まぬけといえばまぬけな物語です。
どこかで「川面に流れる花を欲しがった恋人のために、川に飛び込んだものの、重いよろいのために溺れた」という物語になっているのも見ましたが、ここまでくるともはや悲劇ではなく喜劇ではないかと(笑)。どこの世界によろいを着けたまま川に飛び込むおっちょこちょいがいるんでしょう。
よろいはともかく、昔はオール天然素材なのでかなり服が重かったのは事実だと思います。貴族階級の服となると複雑な織りやびっしり施された刺繍で繊維の総量も多く、どうかすると金銀や宝石が縫い込まれていたりして、さらに重くなります。そして、いつの時代でもどの国でも階級が上がるほど装束が複雑化するので、これを重ね着することになるわけです。昔の貴婦人があまり動かないのにそれなりの筋力を維持したのは、衣装の重さゆえではないか…とわたしは想像しております。
いくら騎士でも恋人とデートする時に武装はしないと思うので、鎖帷子(くさりかたびら)も着けていなかったとしても、上記のような服が水を吸ったら、屈強の武人とて川流れになるのはやむを得ないでしょうね。
ちなみに鎖帷子=Chain Mail(チェインメイル)とは、よろいの下に着用した、細かいチェーンをつないで作った下着的防具です。よく見る、頭からつま先まで金属でおおわれた西洋よろいも、金属板のつなぎ目に当たる関節部分は弱点でした。そのため下をびっしり鎖でおおって補強していたわけです。考えただけで重いですね。
さて、川流れの騎士を想像するうち、わたしは「猿むこ」話を思い出しました。
三人の娘を持つ老いた父親が、農作業がしんどくなって「ここを耕してくれたら娘をやるのに」と愚痴ると、聞きつけた猿が農作業をこなして嫁を請求。上の娘ふたりは腹を立てるが心やさしい末娘は父の言いなりに猿に嫁ぐ。その際、重い物を嫁入り道具として猿に背負わせた末娘は、途中の崖に咲く花をねだり、どんどん枝先に行かせて落ちるように仕向ける。枝が折れて川に落ちた猿は荷物の重さで溺れ死に、娘は上手く村に帰った。このパターンの昔話です。
娘は大喜びで村へ帰りますけど、猿は契約どおりの仕事をしたのだから、これは猿が正当ですよね。さらに猿は溺れながら「死ぬ自分はいいが、嫁御が泣くだろう」と言ったという伝承もあります。まあ、まずは女性のほうに気があるかないかって問題はあるものの、女性のために尽くして川流れになる男性側の真情としては、ロマンティックとされる騎士伝説とさして変わらないと思うんですが。
意外とわたしのように思う人も多いらしく、猿側に心情を移して語る語り手がいたり、娘がひどく後悔するとか、猿を慕うよう変化した話もあるのだとか。やっぱり、命を捧げてくれた相手に「ざまあみろ」はあんまりだと思います。この場合、情くらいはかけてあげるのが女性のたしなみでは…と。
我がために命をかけてくださる殿方がいる、というのはうらやましいことです。そんなロマンティックな恋愛してみたかったかもぉー、などと乙女チックになったりします。
ま、川流れ見て「まぬけ」とまず思う不届き女には、あり得ないことですけどね(笑)。