数年後、道がごちゃごちゃした世田谷からお引っ越し。これで道を聞かれずに済みます(笑)。
ところが引っ越した先は、桜と「心霊スポット」で有名な公園の近くで、まあ、すてきな環境でした…。
別に見栄を張るつもりも、そんなカワイイ感覚もない者ですが、夜のバイト先は当時で言うギョーカイ人(笑)と芸能人がほとんどのお店、こちらもそれなりにカッコが派手だったかもしれません。おまけに変わったカッコが好きときては、目立ってしょうがない。そんな状態で、いつも深夜にアパートへ帰っていたわけです。
アパートは女子のみ物件でしたが、裏は駐車場、その先は数メートルの段差があるためコンクリート壁、向かいは倉庫と業務用の車庫。街灯も届かず、いま思えば、あんなところに女子だけで住んでるほうが怖い気がします。
駅へ向かう一応メインの道路から20メートルくらい入り込んだ、川縁の低地でした。
その日も、バイトを終えて終電で最寄り駅まで帰り、公称でも徒歩15分って長さの道をダラダラ歩いていました。
どちらかというと古い町で、駅からほんの少しだけは商店があるんですが、すぐ途切れ、昭和の香りのする住宅街を延々歩くことになります。夜中となると、誰もいません。
そして、これまた昭和っぽいセメントで固めただけの坂を下りて、最後の街灯を過ぎ、隣の家族向けアパートを通り過ぎようとした時、何かが目の端で動いた気がしました。そして次の瞬間、わたしは後ろから首を締め上げられていたのです。
さすがに、これは終わったかな…と思いました。こっちの腕は取られ、相手の腕が首にがっちりはまり込んで、一応もがいてみたのですが、簡単には抜けそうにもありません。それでも何とかあごを引き、上半身をむしろ相手にあずけるようにして、隙間を作ろうと試みました。
すると相手は腕を取っていた手をはなして、わたしの片方の胸をつかみ、思いきり何度か揉みました。そして、いきなり逃げ出したのです。
いや、これはほんとラッキーでした。でもね、「助かった」と思った次の瞬間、わたしはブチ切れましたよ(笑)。
「てめえっ、待てっ、このヤロー!!!!」
吠えるが早いか、逃げる男を追って走りました。しかし残念ながら、わたしは運動会・体育祭では友だちがいなくなるタイプ(笑)。華奢なサンダルをはいていたせいもあり、わたしがメイン道路に出る前に車のドアの音がして、車は走り去ってしまっていました。
どうやら、いつも深夜に帰るわたしを見かけ、狙いをつけて待ち伏せしていたらしいです。わたしは確かに胸が大きくて、どこへ行っても周囲の話題になるくらい。それにしても、ずいぶんピンポイントな狙いでした。まあ、今回は自力でどうなるものでもなさそうなくらい腕がキマってたので、助かりました…。
それから数ヶ月後。
雨戸を開けたら、裏の駐車場で目つきの悪い変なおっさんがうろうろしています。警戒しつつ見ていたら、近づいてきて何かを差し出した…なんと、警察手帳(笑)。
隣のアパートに泥棒が入り家人がいたので逃げたけど、人がいた時点で「強盗未遂」になっちゃうんだそうで、凶悪犯専門・捜査一課の刑事さんでした。目つきが悪いはずです(笑)。
何か気づかなかったかとか型どおり聞かれたあと、「このへんも暗いからねー。女の子はあぶない。後ろからつけてきて、玄関で中へ押し倒してやっちゃうヤツもいるんだよ」などという話になりました。
「大声出しても誰も出てこないしね」というので「あー、出てきませんでした」と答えると、事情を聞かれました。そこで上記の事件を話しました。「とっさに大声、出ないでしょ」「そうですね。相手が逃げてから叫びました」「何て?」「てめえ、待て、このヤローって」……
大爆笑されました。
もちろんそのあと、逃げる犯人を単独で追ったりするとかえって殺されたりするからと、こってり叱られましたよ。あと、叫ぶ言葉は考えたほうがいいねって言われましたね(笑)。
教訓:慣れた場所ほどあぶない。
知らず知らずいつも同じパターンで行動している場合が多いので、動きを読まれている可能性があります。わたしも鍵を出すタイミングでやられました。目の端の動きで止まってなければ、もう少しきつく捕まってたかもしれません。
あと、人家の近くで何かあったら、とりあえずは女の子らしい声と言葉で助けを求めましょう。「このヤロー」なんて吠えたら、よそ目には酔っ払いのケンカです(笑)。