本日、12月13日。
あら-。13日の金曜日ではないですか。


ホラー映画のタイトルにもなった「13日の金曜日」ですが、なぜ不吉と言われるようになったのでしょうか。

 

 

けっこう浸透しているものに、イエス・キリストが処刑された日だからという説があります。
しかし、イエスの処刑が「金曜日」であることは、キリスト教の祭日に「聖金曜日」があるからには確かなことと思われますが、その日付のほうは「13日」ではありません。

 

 

そもそも、イエスについては後からこじつけられた日付が多くて、広く信じられているものでも実は誤りだったり、議論の的だったりしています。


たとえば、クリスマス。


イエスの誕生日として祝われていますが、聖書研究者よれば、イエスは真夏生まれである確率が高いのだとか。実はクリスマスは、他宗教の「冬至のお祭り」がキリスト教に取り込まれたものといわれています。

 

聖書の時代のユダヤの暦はけっこうむずかしくて、現在の暦法に換算するにも種々の説がありますが、イエスの処刑日については14日15日だったらしいです。

 

ゆえに、処刑日説は誤りということになります。

 

 

このほかに、イエスは13人目の弟子=イスカリオテのユダに裏切られて逮捕されたので、13を不吉とするという説があります。しかし、これは日付に結びつける理由がないとわたしは思います。

 

 

また、聖書で不吉な数字と明言されているのは、わたしの知る限り「666」であり、「13」は特に問題視されていないはずです。

 

今回、確認のためWikipediaに当たってみたところ、北欧神話では「13」が不吉な数字とされているとのことでした。


ということは、クリスマス同様、キリスト教がひろまる課程で欧州の土着の感覚が混じってできたものであり、直接イエスや聖書と関係しているというのは当たらないと思われます。

 

 

 

Wikipediaによると、北欧神話では「金曜日」も不吉に受け止められていたそうです。

 

 

欧州というと完全にキリスト教化されたイメージがありますが、実はなかなか迷信深く、民俗学関係の本で、二十世紀に入ったドイツで「月足らずで生まれた娘は魔女になる」とかいう迷信のため生まれた女児を殺した、という報告も見かけたことがあります。

 

この根深さでは、土着の宗教を捨てたのちも、欧州人の心の中に「13」と「金曜日」を恐れる気持ちはずっと残っていたのではないでしょうか。

 

 

そして1307年のフランスにおいて、彼らの恐れを裏書きするような大事件が起こります。
フランス王フィリップ四世による、テンプル騎士団の殲滅(せんめつ)です。

 

 

現在でも三つの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)の聖地として面倒なことになっている都市・エルサレム。


中世にはキリスト教徒とイスラム教徒のあいだで、この聖地をめぐる一大戦争が起こります。キリスト教徒は異教徒から聖地を奪還するべく、軍隊を送りました。これが「十字軍」です。

 

 

この「十字軍」のため結成されたのが「騎士修道会」いわゆる「騎士団」です。

イスラムとの戦いや巡礼の保護に当たった、この「戦う聖職者集団」のなかで、最古の団体がテンプル騎士団でした。

 

 

各騎士団は欧州じゅうから寄付を受けて、各国の王室をしのぐ金持ちにふくれあがります。

 

特にテンプル騎士団は財務にすぐれていたようです。

 

戦争開始から約二百年、十字軍の劣勢が明らかになると、テンプル騎士団の豊かな財力を狙ったフランス王が「異端(正当な教えから外れた信仰を持つ)」と言いがかりをつけて、突然、すべての団員を逮捕しました。

 

 

フランス王室は財政難で、騎士団に莫大な借金があったともいわれています。

 

ともあれ、この前触れなしの逮捕劇が起きたのが、ユリウス暦1307年10月13日の金曜日だったのです。

 

 

神様のために戦う、お坊さん兼誇り高い騎士のはずの人々が、いきなり「悪魔の手先」として暴力的に捕らわれるさまを見た、当時の人々はどれほど恐ろしかったことか。

 

 

誰の心にも、悪魔が跋扈(ばっこ)する「13」日の「金曜日」への恐怖が浮かんだのではないでしょうか。

 

 

当時の教皇はフランス出身で、フランスの意向を無視できませんでした。騎士たちは濡れ衣を晴らすすべもなく、凄惨な拷問を受けて「自白」をしぼり取られ、残忍な方法で処刑されていきました。

 

 

このとき、騎士団長であったジャック・ド・モレーにおどろおどろしい逸話が残っています。

 

生きたまま焼き殺された彼が、教皇と王に向かって「一年以内に神の裁きの庭に召喚する」と告げたというもので、実際に教皇もフィリップ四世も、その年のうちに亡くなっています。フィリップ四世は46歳の若さで、「余は呪われている」と言い残して亡くなったともいわれます。

 

 

オカルト譚は後付けだとしても、この世の「神の代理人」と「神に祝福された王」が相次いで亡くなったことも、民衆の恐怖をかき立てたことだろうと思います。


迷信ベースに一連の恐怖、「13日の金曜日」伝説・言いつたえができあがるには充分かな、と思うのですが…

 

 

 

ところで今日は、日本では「正月事始め」。お正月の準備を始める吉日とされています。
Wikipediaによれば、江戸中期まで使われた暦では12月13日は必ず「鬼宿 (きしゅく)」=例の「嫁取り以外はすべて吉」の日だったからだそうです(ただしこちらは「二十七宿」というインド由来の星占いによる)

 

 

 

ところ変われば品変わる。面白いですね。

 

さて、今日は不吉な日として用心しますか? 吉日として大掃除を始めますか?
大掃除って話では、わたしにはさして吉日ではないんですけどね…(笑)。

 

 

 

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