本日10月23日。
華岡青洲(はなおかせいしゅう)の誕生日です。

グレゴリオ暦では1760年11月30日生まれですが、例によって旧暦でみると、宝暦10年10月23日生まれとなります。そして、今日の誕生花は、なんと朝鮮朝顔なのです。恐るべし、華岡青洲(笑)。
<話が見えない方は過去記事こちらへ>

朝鮮朝顔、園芸では「ダチュラ」、近年は「エンジェルズ・トランペット」とも呼ぶそうです。花言葉は「愛敬」「偽りの魅力」「変装」「恐怖」。いかにも毒草って感じの花言葉ですね。

朝鮮朝顔にはアトロピンという成分が含まれています。
これはベラドンナなどにも含まれるアルカロイド(有機化合物)で、大量に摂取すると昏睡や呼吸麻痺を起こす毒物ですが、点眼すると瞳孔を拡散させる作用を持っています。

イタリア語で「ベラ・ドンナ」とは「うつくしいご婦人」の意。
なぜこういう名前なのかというと、アトロピンの作用を利用して瞳孔を開き、印象的な明るい目を演出する美容術があったからなのです。現代だと、カラーコンタクトを入れるような感覚でしょうか。

毒草を目に入れるなんて、なかなか怖い美容術ですが、うつくしくありたい女性の願いはすべてを乗り越えちゃうほどのものなんでしょうねぇ。わたしにはちょっとわかりませんけどね。

でも、まあ、たとえば夫がどうしても気に入らないなんて場合、美容用品がいきなり「解決法」に活用できたりもしたようですから、化粧箱に備えておくのは女性のたしなみかも…(どっちがコワイんだ:笑)。

ちなみに、アトロピンは現在でも眼科で使われています劇薬指定で厳重管理です(現役でなくなって長いけど、OMA=「眼科診療補助員」の資格持ってます)。

以前にも書いたとおり「誕生日花」はいろいろな説があって、さすがお花というべきか、平和的に並べて紹介されるようです。本日の他の誕生日花はあけび、そして茉莉花(まつりか)

茉莉花とはアラビアジャスミンのことです。
中国の怪異談集『閲微草堂筆記』には、親の決めた許嫁がいる女性が好きになった人と結婚するため、茉莉花の根をつぶして飲み、仮死状態になって埋葬された後に、愛する男性と逃亡したという話があります(ただし、この話の「茉莉花」が正確にアラビアジャスミンを指すものかどうかはわかりませんでした)。

ここまできたら、あけびにも毒がないかしらと調べてみたら、「(有)大川商店」さんという漢方・生薬薬局のサイトに「若葉やつる先は食用になるが少々毒性があり、食べすぎに注意」とありました。

あ、今日お誕生日の方、気を悪くなさらないでくださいね。
華岡青洲の業績に見るとおり、毒と薬は表裏一体。とても人の役に立つ、薬効の高い植物ばかりだってことなのですから。

ところで、毒・薬草と女性の外見で思い出したんですが、猛毒トリカブトは附子(ぶし)とも呼ばれます。これは「ぶす」とも読まれ、狂言の演目『附子』は「ぶす」ですね。

一説には、この狂言が「ブス」の語源になっているとか。
江戸時代には附子=「いやなもの・嫌いなもの」といった意味もくっついてきたようですから、ありそうに聞こえますね。けれども、戦前には顔の美醜について「ぶす」とは使っていなかったということで、「不細工なスケ(女性を指すスラング)」からきた、という説もあります。


注意:言うまでもありませんが、朝鮮朝顔で遊ばないでくださいね。毒性強いですから。