今月の新橋演舞場では昼・夜ともに通し狂言。
「通し狂言」とは、演目を序幕から大詰めまで一挙に上演する方式。
昼の部の通し狂言は「敵討天下茶屋聚(かたきうちてんかぢゃやむら)」。
御家乗っ取りに絡んで対立する二人の家老の争いをきっかけに、
東間三郎右衛門を父の敵として追う早瀬兄弟と、
早瀬方でありながら酒乱癖により勘当され東間方に寝返る安達元右衛門を中心に描かれる、
歌舞伎で好まれているいわゆる「仇討ちもの」。
見どころは幸四郎による、三郎右衛門と元右衛門の二役。
どちらも悪役ながら、前者は凄みのある実悪、後者は三枚目という、
演じ分けが役者の見せ場。
この二役による上演は天保14年、1843年以来のことらしいです。
当時二役を演じたのは四代目大谷友右衛門。
その八年前に彼は元右衛門を演じて、
「友右衛門の元右衛門か、元右衛門の友右衛門か」(紛らわしい・・・)
と評されるほどの当たり役となったそうです。
タイプは違えど同じ悪役の二役なので、見分けやすいよう、
三郎右衛門の時は左眉の上にホクロを書いています。
これは江戸時代の悪役の花形だった五代目松本幸四郎を模したもの。
感想としては・・・
高麗屋贔屓として観ても、演出のせいか今ひとつの演目でした。
売りである二役のせいで、悪役の魅力が分散している感じです。
また、悪役のインパクトが強すぎて善である早瀬兄弟を応援しにくい。
きちんと発端から、仇討ちの本懐を遂げる場面まで描かれているのですが、
善側の魅力が乏しいだけにラストのカタルシスも弱かった印象です。
とはいえ天保時代以来の試みの演出に立ち会えたのは貴重な経験。
これからもそういうチャレンジをどんどん続けていって頂きたいものです。