「シネマ歌舞伎」というのをご存知でしょうか??
簡単に言えば「映画のスクリーンで歌舞伎を観る」というもの。
安価な席では見ることの難しい花道での演技や、
前方の席でも見逃しがちな役者の表情などもアップで映してくれるので、
ある意味スグレものなこの企画。
現在、東劇にて全作品のアンコール上演を行っており、
今回は「野田版 鼠小僧」を見てきました。
主演は中村勘九郎(当時)
シネマ歌舞伎のほとんどは勘三郎か玉三郎主演の新歌舞伎か舞踊劇です。
が、むしろ新歌舞伎の方が言葉が現代に近いですし、
内容もコミカルでわかりやすいので歌舞伎初心者の方にも入りやすいのでは。
閑話休題。
内容としては「鼠小僧」が上演されてる劇場の向かいに住んでいて、
ドケチで有名な棺桶屋の三太が、ひょんなことから盗賊・鼠小僧になってしまう。
盗みに入った屋敷で目撃してしまう、大岡越前守の不倫現場や悪事の事実。
知ってはならない秘密を抱えたまま岡引に捕らえられ、
大岡越前守の裁きを受ける鼠小僧=三太だったが・・・
というお話。
まず野田秀樹による演出が見事。
歌舞伎の手法を現代風に、非常にナチュラルに取り入れています。
光や小道具の使用も嫌味にならない程度に効果的に用いられています。
そして中村屋一門の現代風でコミカルな演技。
伝統芸に裏打ちされた確かなものなので、薄っぺらでない。
笑いあり、涙ありの内容で、勘三郎の演技も力が入っているのがスクリーン越しにも伝わってきました。
しかしシネマ歌舞伎でも気になったのが観客の笑いどころ。
鼠小僧・三太に不都合な現場を知られた大岡越前守は裁判の前に三太に言います。
「命惜しくば話を合わせろ。命あっての物種、だ。」
それを聞いて、無罪放免の可能性を感じた三太は応じます。
「そういう、ものだね!」
場内、爆笑。
そして鼠小僧を裁く"大岡裁き”が始まりますが、何だか毛色が違ってくる。
大岡越前守の失態やその他の人間の汚名を全て三太に押し付けられ、
それを許すのも大岡の人徳によるものというストーリーになってくる。
一方的に名誉を傷つけられ釈然としない様子の三太に対して大岡は耳打ちをする。
「わかっているだろうが、"命あっての物種”ぞ?」
そして呆然とした表情の三田は再び漏らします。
「・・・・そういう・・・ものだね・・・・」
ここで、何故か再び爆笑の場内。
同じ台詞なんだけど、三太の心情は全然違う。
同じ台詞だからこそ、三太の心情の違いがよくわかる。
同じ駄洒落でも同じように笑われてしまうのは少し残念に感じました。
もちろん、受け取り方は個人の自由のなんですけどね。
シネマ歌舞伎で上演されるのは勘三郎・玉三郎作品がほとんどなのですが、
彼らの演目は若い人にも受け入れやすいものが多いので、
歌舞伎に興味あるけど、ちょっと敷居を高いと感じてる方、
シネマ歌舞伎を試してみるのもアリだと思います。

