46番目の密室(新装版)を読了しました。
本作は有栖川作品の中核を成す「火村シリーズ」の第一作目で
1995年に第1刷が発行され、2009年に新装版が発行されました。
語り手は、専業推理作家である有栖川有栖(ありすがわ ありす)。
本文中での「わたし」である。
大阪生まれ大阪育ちの32歳(その後、永遠の34歳となるが)。
名前は母親につけられた本名であり、性別は男性である。
そして小説の中での探偵役は、火村英生(ひむら ひでお)。
京都の英都大学社会学部で犯罪社会学を教えている、助教授である。
有栖川と同年齢で、彼とは大学時代からの友人関係にあたる。
彼の研究方法は、捜査の現場に飛び込んで実際に犯罪とぶつかること。
今までに何度も警察の捜査に非公式に協力し、その際に警察に先んじて
事件を解明したことも何度かある探偵の天分が備わった男である。
その二人が巻き込まれる事件を、有栖川視点で文章化したものが
「火村シリーズ」と呼ばれるものです。
火村シリーズは
46番目の密室、ダリの繭、海ある奈良に死すなどの長編から
スイス時計の謎、ペルシャ猫の謎、暗い宿などの短編もあります。
今回、紹介するのはその記念すべき第一作目である「46番目の密室」
日本のディクソン・カーと称され、45に及ぶ密室トリックを発表してきた
海外でも名の知れた推理小説の巨匠、真壁聖一。
彼が主催する恒例のクリスマスパーティに正体された客人たちは
作家と謎の男の無残な姿を目の当たりにする。
彼らは46番目のトリックで殺されたのか―
と言うのが本作品のあらすじ。
推理小説ほどネタバレに気を使うジャンルは無いと思っていますので
差しさわりない範囲での感想になってしまいますが
僕はスイス時計の謎、など有栖川先生の短編しか読んだことがなく
この46番目の密室が、有栖川作品で初めての長編となりました。
火村シリーズの第一作目が、初めての長編でよかったと思いました。
新装版ですので、既刊とは若干内容が異なるようですが・・・。
些か非現実的ではあるなと思うものの、有栖川の考えたトリックは
意外性があって面白かったです。
それが現実的に可能なのかと言うことは、置いておいて・・・ですが。
題名の通り、本作品では密室が事件を解く大きな鍵となるのですが
やはり密室ものは難しいですね。
作家様の苦労は充分理解しているつもりなのですが、総じて密室は
読者をあっと驚かせるような解決に結びつかないことが多いですよね。
今回の解決は、納得できるものではありました。
個人的な意見としては、有栖川の考えた奇抜なトリックの方が
僕は面白く感じましたが。
登場人物が非常に魅力的で、文体が繊細だと感じます。
本作品は
ディクソン・カーとエラリー・クイーンの混血児を創りだそうとしたとか。
興味を持たれたかたは、読んでみてはいかがでしょうか。