「恵比寿で物件を探している」という話を、師匠から聞いたのは何年前だろうか。

その昔、恵比寿『inishmore』の1階のカウンターで。

TVモニターには「Tour de France」の映像が流れていて、店の前には師匠の黄色いキャノンデールと、オオモリさんの黒いキャノンデール。そして僕のアンカーが並んでいるのが、ガラス越しに見えた。ボブさんのキャノンデールと、ナバナッティのピナレッロも。

あの頃、1階のカウンターを一人でやらせてもらえる事が多かった僕は(キッチンから抜け出せるのが何より嬉しかった)、師匠やオオモリさんといろんな話ができた。

近所のフレンチ・レストランの仕事を終えてから、いつものようにキャノンデールを定位置(カウンターの椅子から、ガラス越しに一番よく見える場所)に停めて、カウンターでペルノを飲んでいた師匠と「理想の自分の店」の話になった。

師匠は、「場所は絶対に恵比寿」で「カウンターがある小さい店」で「無駄なモノは一切無し」で「グラスは大きい感じ」で「気の利いたツマミがある飲み屋」をやる。って言ってた。で、「客は俺の話を聞きに、わざわざ足を運ぶんだよ。そんな店、お前好きだろ?」って。


あれから数年が経ち、それが現実のものになりました。





これが店の看板です。いかにも師匠っぽくて、嬉しくなっちゃいました。



心地よい店内。広さとか絶妙で、かなり好きな感じです。



メイちゃんと一緒に、たまにはシッポリ飲もうと思ったら、カウンターに馴染みの顔ぶれがズラリ。やっぱりここは恵比寿だなぁと、ちょっと懐かしく思いました。



これは裏メニューです。師匠がわざわざ作ってくれました!



酒瓶の棚に自転車のペダルが飾ってあったり、ジミヘンのポスターとか、師匠の色が満載。

やっぱり自分の店っていいな。



「数年前の師匠の予告どおり、大きいグラスですね」と、飲んでいたジントニックのグラスを見ながら僕が言うと、師匠は少し照れた感じで「お前には、酔ってペラペラ喋るんじゃなかったな」と言って笑った。



恵比寿2丁目『BICYCLE』

OPEN 18:00~3:00