天才の女性遍歴:ピカソ
結城昌子さんの『ピカソ 描かれた恋』を読みました。
ピカソの絵の変遷を女性との恋愛の変遷と重ね合わせて解説されていて、とても面白かったです。
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「創造と破壊」を繰り返した20世紀の天才ピカソ。
あまりにも画風が多彩すぎて、良さは認めつつも、どの時代がいいかを選ぶのも至難の業だし、これまで好きな画家には入っていなかったんです。
でも、ピカソの絵があんなにも変遷した影には、そのたびに現われては捨てられる女性遍歴があったようです。
親友の自殺によって受けた精神的衝撃からの「青の時代」の後。
まず最初に妻となったのはロシアの貴族の血を引くバレリーナのオルガ・コクローヴァ。
その肖像画は、親友の自殺によって受けた精神的衝撃による「青の時代」を脱し、とても写実的で古典風です。
背景をあえて描かずに残している点などは、古典のものとは違ったピカソならではの主題の際立たせ方といえるでしょう。
しかし、こうした画風を「創造」し確立した後、「破壊」が起こります。
オルガを捨て、17歳だったマリー・テレーズを街で「一緒にすごいことをしましょう」とナンパ。
捨てられたオルガは後に精神に異常をきたします。
新しいマリー・テレーズの肖像画では画風が一変します。
夢/ピカソ
ふくよかで柔和なマリー・テレーズがデフォルメされて描かれています。
しかし、マリー・テレーズとつきあっているときに、ドラ・マールという知的な美人写真家とも二股をかけてつきあっています。
その時はまたマリー・テレーズとは違った肖像画を描いています。
ドラ・マールの肖像/ピカソ
ドラ・マールの知的で華やかな印象が描かれています。
恋の闘いに敗れたマリー・テレーズは自殺。
しかし、残ったドラ・マールもやがてピカソから冷たく突き放されます。
泣く女/ピカソ
ドラ・マールは知的さを投げ出し、泣く女として美女台無しの姿に変えられてしまい、いずれ精神衰弱に陥ります。
その後も、フランソワーズ・ジローという21歳の画家の卵と暮らしたり、その後はジャクリーヌ・ロックという陶芸工房の若い女性と付き合ったりと女性遍歴を繰り返し、そのたびに新たな「創造」をしています。
「とんでもない女たらし」ですが、ピカソにとっての女性遍歴は凡人の煩悩ではなく、天才が新しい創造の芽を得るために必要だったのでしょう。
ピカソにとっては、恋人や妻、家族である以上に、画家とモデルという関係が優先され、その本質を見出すために、全身全霊で愛し、冷たく突き放して、モデルの本質を見出そうとしていたようです。
「肖像画は肉体的にも精神的にも似ている必要はない。心理的につかめていればいいのだ」
ピカソが言った言葉に、彼の態度の本質が表れているように思います。
芸術に捧げた天才の人生は、凡人のぼくの想像の域を超えていますが、ささやかなしあわせに満足しきれなかったピカソに大きな敬意を表しつつ、少し可愛そうに思います。



