ル6)後述(シノタケリズムケズリタックル | 岩感の正体

岩感の正体

全成俯瞰全

 スペイン1部バルセロナのMFアンドレス・イニエスタ(34)が15日、自身の新天地について言及。J1神戸が獲得に乗り出している日本か、中国かの二者択一とし「来週に発表できればと思っている」との見通しを語った。

 スペインのラジオ局、オンダ・セロとのインタビューで語ったもの。今季限りでバルセロナを退団、次にプレーするチームについて「(出身地のフエンテアルビージャから)ここへ来たのに次いで大事な決定になる。中国と日本という舞台があり、それぞれにいいところがある。すべてをてんびんにかけて検討する」と発言。加えて「一方の方がもう1つより話が進んでいる」と、心中では最終候補が決まっているとも受け取れるニュアンスを含ませている。
 なお一部報道では元バルセロナ監督のグアルディオラ率いるマンチェスター・シティへの移籍の可能性もあったとされるが「彼からメッセージをもらったのは事実だが、報道は不可解なもの。敵としてバルサと戦わない。僕にとってトップレベルのサッカーはバルサで終わる」としている。


試合前々日、三木谷浩史会長は「水曜日はAll ○○でどこまで行けるかな?」と、謎かけのようなツイートを投稿した。
そして試合当日には「○○」と投稿。
これが一部では様々な憶測を呼んだが、その数時間後には「生え抜きですよ 今日のルヴァンカップはスタメン全員生え抜き!」と、再度の投稿を行った。
この一連の流れはネットニュースで取り上げられる程の話題となったが、筆者はこれらのツイートからは三木谷会長の嬉しさが滲み出ているように感じた。
実際に試合を観戦し、試合後にはサポーターを労うと同時に、「今まで我慢して作ってきた育成システムが少しずつ実り始めたのを実感できる試合だった」と、感想をツイートした。
この言葉に全てが集約されている。
 クラブ誕生から2003年までの間、ヴィッセルのアカデミーはお粗末な存在だった。
ユースカップでの優勝こそ一度あったものの、アカデミー出身者でトップチームの戦力となった選手はほぼ存在しなかった。
何人かトップチームに昇格はしていたが、その実力はJ1レベルとはいえなかったのが実情だ。
その流れが劇的に変わったのは2005年。
J2への降格を機に、「育成・発掘型クラブ」への転換を宣言したのだ。
そして寮(三木谷ハウス)をはじめとするインフラの整備、スカウト網の確立、アカデミースタッフの充実など、文字通り根本から再構築していった。
その流れの中で、小川慶治朗を皮切りに幾人もの選手がトップチームに昇格、戦力としてチームを支えてきた。
今ではヴィッセルのアカデミーといえば、全国レベルで強豪の一角として認識されている。
 こうして文字にしてしまうと、何気ないことのように見えてしまうかもしれないが、実はこれは凄いことだ。
アカデミーの重要性については、ほとんどのクラブが認識している。
しかし実際にそこに注力できるクラブとなると、そうはない。
アカデミーへの投資は、回収までの時間がを要するからだ。
ヴィッセルも、ここに至るまで15年近い年月がかかっている。
ヒト・モノ両面でのインフラを整備したからといって、すぐに優秀な選手が集まるわけではない。
幾つものクラブや高校という選択肢の中から選ばれるまでには、まず実績が必要だ。
投資に見合う回収が保証されているわけではない。
こうした状況が、クラブにアカデミーへの投資を控えさせてしまう。
筆者の知る限りでも複数のクラブが、アカデミーの充実をテーマには掲げたが、数年のうちにはそのムードも退潮している。
10年以上にわたって投資を続け、拡充してきたという点において、ヴィッセルは稀有なクラブなのだ。



 この試合で、ヴィッセルのスターティングメンバーの平均年齢は23歳を下回っていた。
11人中7人がアカデミー出身であり、4人が学校を卒業後ヴィッセルに加入した生え抜き選手。
最年長の北本久仁衛から最年少の小林友希までの年齢差は、実に19歳。
この日のメンバーは、ヴィッセルの歴史そのものと言っても過言ではない。
勝利できなかったことは悔しいだろうが、このメンバー構成を見て三木谷会長が感慨を抱くのは十分に理解できる。

 こうした情緒的な話だけではない。
昨日Viber公開トークで配信した速報版にも書いたが、この試合では戦術面でもヴィッセルの未来を覗くことができた。
この試合の基本布陣は4-4-2。
しかし攻撃時には2-3-5に変化していた。
ここで鍵を握っていたのは、左サイドバックの三原雅俊だった。
この三原の動きこそが、ヴィッセルの戦いを戦略的なものにしていた。
試合を見ている中で、三原の動きに違和感を覚えた方もいるかもしれない。
通常、サイドバックというと攻撃時には前後への動きが中心になるのだが、この試合における三原は何度も中央に入り、ビルドアップに加わっていた。
これについて吉田孝行監督は、試合後の会見の中で「ちょっと新しいことにチャレンジしてみた」という言い方をしていたが、実はこれこそが「偽サイドバック」と呼ばれるものだ。
ペップことグアルディオラ(マンチェスターシティ監督)がバイエルン・ミュンヘン監督時に確立し話題となったシステムだが、最近のJリーグでは柏の中山雄太が得意としている動きだ。
 この試合のメンバーで言うと、ヴィッセルの攻撃時に三原がボランチの位置に入ると同時に、ボランチの安井拓也がアンカーの位置に移動する。
そして右サイドバックの藤谷壮はタッチライン沿いをウイングバックの位置まで上がる。
左側では小川が同じポジションを取る。
前線では佐々木大樹を頂点にして、郷家友太と中坂勇哉とがトライアングルを形成する。
こうして2-3-5という、攻撃的な布陣が出現するのだ。

 ここで大事なのは縦位置だ。
これを理解するためには、5レーンについて基本的な事項を押さえておく必要がある。
最近はサッカー雑誌などでも盛んに取り上げられる「5レーン」だが、これは文字通りピッチを縦方向に5つに分割した考え方だ。
これまでは左右と中央の3分割だったところを5分割にすることで、左右と中央との間に「ハーフスペース」というエリアが登場した。
これを基にヴィッセルの2-3-5の選手配置を見ていくと、ウイングと呼ばれる左右外側のスペースには小川と藤谷だけが位置している。
そしてセンターにはアンカーに変わった安井と最前線の佐々木だけが位置する。
残りの6選手はハーフスペースに位置しているのだ。
この結果、右のハーフスペースには北本-松下-郷家、左には小林-三原-中坂という縦のラインができることになる。
これによってピッチ上には幾つものトライアングルが誕生する。
これこそが、この布陣の最大の狙いだ。
 サッカーでは基本といわれるトライアングルだが、この最大の利点はボールホルダーにとってはパスコースが常に二つ用意されていること。
そしてボールを奪われたときに、取り囲みやすい点にある。
このトライアングルを有効に動かすためには、選手間が無理なくパスを通せる距離にいなければならない。
そこでピッチ上に均等に配置していった結果が、この試合でヴィッセルが見せた攻撃時の布陣なのだ。
吉田監督が試合後にコメントしたように、個人がボールを持つ時間が長く、かつ細かなミスが随所で散見されたため、相手を圧するところまではいかなかったが、この布陣=ポジショニングがもたらす効果は十分に発揮されていた。
試合後、鳥栖でボランチを務めた加藤恒平は「前からの守備が嵌らなくなってからは、捕まえきれず、特に前半はしんどさがあった」と語っていたが、鳥栖の選手に対してボールの奪いどころを定めさせなかった。
 サッカーというスポーツにおいては、「優位性」という言葉が頻出する。
日本では「数的優位」という言葉ばかりが使われることが多いが、そもそも優位性というのはそれだけではない。
他には個人能力の優位性、そしてこの試合でヴィッセルが見せた「ポジショニングによる優位性」だ。
極論すれば、全ての選手が相手選手を遥かに上回る技量を持っているならば、戦術などさほど考える必要はない。
高校生が小学生と試合をするようなものだ。
しかし、個々の技量差が小さく、戦力が拮抗しているならば、どこで優位性を作り出すかという課題に直面する。
そこで個人能力に依存することなく、相手よりも優位を保てるポジショニングを考えることになる。
これが「ポジショナルプレー」と呼ばれるものの正体だ。
 この試合でヴィッセルが見せたサッカーは、そういった意味でも興味深い。
先述した形だけではなく、三原が3バックの左に入り、松下と安井がその前でボランチになる形や、安井がアンカーではなくセンターバックの真ん中に入り、3バックを形成する形など、幾つかの布陣が見られた。
その使い分けは相手の位置によって決まっていたように思うが、いずれにしても縦位置は5レーンを意識したものだった。
これによって個人の技量に頼ることなく、アタッキングサードまで効率よくボールを運んでいた。
これに対して一部では「縦パスがないから効果的ではない」といった批判的な言説もあったようだが、それは的外れというものだろう。
この試合でヴィッセルが見せたボールの動かし方こそが、戦略的なポジショニングであり、それが生み出すパスワークだったのだ。

 こうしたトライアルができるのも、ヴィッセルの選手のレベルが上がったからだ。
アカデミー出身者を中心に、基礎技術を高いレベルで習得している選手が揃ったことで、パスワークにこだわったサッカーを目指すことができるようになった。
グアルディオラに拠れば「パスは優位性のあるポジショニングを得るための手段」ということだが、正に基礎技術を正しく発揮できるサッカーにヴィッセルは向かいつつある。

 とはいえこうしたトライアルができたのは62分までだった。
理由はもちろん、郷家の退場だ。
相手との接触で倒された際、郷家が相手選手を蹴り上げてしまい、一発レッドとなってしまった。
郷家の気持ちは判る部分もある。
映像で見直してみたが、郷家は倒された後、さらに腹部を蹴られている。
それ以前から、激しいチェックにあっていたことも影響していたのだろう。
フラストレーションで我を忘れてしまい、審判の目の前で相手選手への報復行為を行ったとしての退場処分だった。
気持ちは判るが、やはり郷家には猛省を促したい。
個人の感情を優先させることは、チームを危機的状況に陥れてしまうことと同義だ。
過去に技量に優れながら、感情のコントロールができず大成しなかった選手を何人も見てきた。
郷家がそういうタイプの人間でないことは、これまでの試合を見てきた中で判っているが、今回の処分を重く受け止めて欲しい。
結果的に、大事な札幌戦に郷家は出場することができないのだ。
近い将来、ヴィッセルを背負ってアジアで、そして日本を背負って世界で戦わなければならない選手であるという自覚を持って欲しい。

 判定に関していえば、この試合の判定基準には聊かの疑問を抱いている。
主審を務めた荒木友輔氏は、試合の流れを寸断しないことに重きをおいていたようだった。
試合序盤から必要以上に笛を吹かず、スピード感のある試合を演出していた。
しかし鳥栖の選手の激しいチャージを流し気味にしてしまったことで、判定基準が作りにくくなってしまったように思う。
その結果、荒れ気味の試合になってしまったことは、ヴィッセルが面白いサッカーを展開していただけに残念だった。



 ヴィッセルのゴールマウスを任されたのは、この試合がJ1での初出場となる吉丸絢梓だった。
試合後、吉丸は思った以上に緊張したと語っていたが、巧く緊張感を押さえ込んだプレーだったように思う。
キックオフ直後にパスを受けたことも好影響を与えたようだが、慌てて前に出ることもなく、ボールの処理も落ち着いていたように思う。
まだ予備動作の大きさなど改善すべき点はあるかもしれないが、十分にトップチームで戦えるだけの素材であることは間違いない。
試合終了間際にハーフナー マイクの得点をアシストした場面では、キックの質の高さを見せた。
セットプレーとはいえ、1点を追いかける試合終了間際に、あれほどの精度でボールを蹴ることができるキーパーはそう多くはない。
しかもそれが得点に結びつくという、勝負運も持っている。
前川黛也と並んで、キム スンギュの牙城を崩すべく精進して欲しい。

 この試合で「らしさ」を見せたのは、中坂だった。
ダブルタッチからのドリブル突破など、テクニックを活かしたプレーは健在だった。
今季はなかなか出場機会に恵まれないため、リズムを作り難いかもしれないが、中坂の人を喰ったような個性はヴィッセルでは異質なものだけに、必ずその力が必要なときは来る。
ゴール前で佐々木のクロスに飛び込んだシーンなどは、タイミングはばっちりであり、中坂の攻撃センスの良さを感じさせた。



 センターバックで出場した小林についても触れておく。
試合後、吉田監督は「高校生としてはよくやった」とやや厳しい評価をしていたが、これこそが小林への期待の表れだろう。
本人は右足のキックに問題を感じているようだが、キックのスピードも申し分ない。
並みのセンターバックであれば、十分に及第点なのだろうが、やはり小林も目線が高いのだろう。
競り合いについてもただ高さで勝つだけではなく、味方に落とす、相手の中盤を越える位置まで戻すという一歩先を課題としてあげていることからも、それが判る。
ボールを受けてからの相手のいなし方を見ていると、足もとの技術も相当に高い。
スペースを見つけて縦に上がっていく判断力も悪くない。
世代の代表としての活動に加え、トップチームで揉まれることで大きく育ってくれると期待している。



 この試合で、改めて巧さを感じたのが佐々木だ。
佐々木は右サイドでボールを受けて時間を作る場面が多かったのだが、その際に激しく寄せてくる鳥栖の選手に対する手の使い方が巧かった。
下手な選手がやると、相手に対して力を入れすぎてしまいファウルを取られるのだが、佐々木は巧く相手との距離を維持しながら、相手の動きをコントロールすることができる。
前で仕掛ける攻撃的な面だけではなく、こうした落ち着いたプレーもそつなくこなすことができる能力の高さには、改めて驚かされた。
相手のブロックの外側から柔らかいタッチのキックを入れていくなど、器用さもある素晴らしい選手だ。

 試合後、吉田監督はこの日見せた攻撃について「小川にボールが入るところまでは良かった」と語った。
その小川は左サイドでのプレーが主だったが、どうも左はプレーし難そうに見えた。
左足で受けて前を向くことができないため、どうしても外を回る動きになってしまい、動きが僅かに遅れてしまっていた。
縦にいくスピードは申し分ないだけに、サイドでの受け方を少しだけ工夫すれば、大きな戦力になると期待している。



 敗色濃厚だった試合を振り出しに戻したのは、ハーフナー マイクの傑出した強さだった。
77分に投入されたハーフナー マイクだったが、相手もハーフナー マイクの高さを警戒しており、加えてヴィッセルが一人少なかったこともあり、なかなか前でボールを触る場面が訪れなかった。
そんな中、後半アディショナルタイムに得たフリーキックで、吉丸からのロングボールを巧く落とし、左足でニアに蹴りこんだ。
これはさすがのプレーだった。
高さだけではなく、足もとの技術もあるマイクならではのゴールといえるだろう。

 グループステージを単独一位で通過したヴィッセルは、来月プレーオフで横浜FMと対戦する。
ヴィッセルにとっては、5年連続でのノックアウトステージ進出がかかっている。
リーグ戦では低迷している横浜FMだが、その底力は侮れない。
リーグ戦の対戦では勝利しているが、途中までペースを握られていたことを忘れてはならない。
ヴィッセルらしい主導権を取る戦いで、これを捻じ伏せてほしい。
そのためにも、この試合で見せたサッカーの理解度を深めてほしい。
そうして戦術の幅を広げることで、どんな相手にも主導権を取った戦いのできるチームへと成長して欲しい。

 中3日で迎えるリーグ戦・札幌戦ではどのような戦い方をするかは判らないが、ここは順位的なことを考えても、勝利だけが必要になる試合だ。
ここを勝利し、W杯による中断期間に新しい取り組みを進めてほしい。
技量に優れた選手たちが、この日見せたサッカーを体得したらと考えると、それだけでワクワクしてくる。
今やヴィッセルは、それだけのチームへと成長しているのだ。
ぜひ一人でも多くの人に、この成長のプロセスを見届けて欲しい。