【得点者】
神三田啓貴(78分)
川小林悠(88分)
心斎橋(御堂筋
西梅田(四つ橋筋
試合後の会見の中で吉田孝行監督は、「選手の頑張りを誇りに思う」とした上で、「残念ながら後味の悪いゲームとなりました」と続け、判定への疑義を口にした。
これは吉田監督としては珍しい。
この試合に賭ける思いが強さが伝わってくると同時に、それだけに納得のいかない判定によって結果を左右されたことが許せなかったのだろう。
さらに、最後まで闘争心を剥き出しにして戦った選手たちのためにも、ひと言いわずにはいられなかったという部分もあったように思う。
吉田監督が問題として指摘した判定は二つだ。
51分に小川慶治朗がペナルティエリア内で倒されたプレーと、81分にチョン ウヨンが小林悠を倒したプレーについての判定だ。
吉田監督は映像で確認した上で、小川が倒されたプレーはPKが妥当であり、チョン ウヨンのプレーはコースに身体を入れただけであり、イエローカードは不当であると訴えた。
筆者も映像を見直してみたが、吉田監督が怒る理由は理解できた。
主審を務めた飯田淳平氏の判定基準は、試合を通じて明確だったように思う。
それは相手を引っ張ったプレー、脚を蹴ったプレーに対しては厳しくファウルを取るが、ショルダーチャージは流すというものだった。
それに照らし合わせれば、少なくとも小川のプレーに対する判定はPKが妥当だとは思うが、審判の目には、小川に対する車屋紳太郎のプレーはボールに対するチャレンジと映ったのだろう。
そしてチョン ウヨンのプレーは、小林の肩に手をかけて引き倒したように見えたのだろう。
ヴィッセルにとっては受け入れ難いものではある。
筆者とて、一人のヴィッセルファンとしては、到底受け入れられるものではない。
しかし、である。
このような「疑惑」はサッカーにはつきものであることも事実だ。
そして、その不自由さもサッカーを構成する一つの要素であることは、認めなければならない。
結局は、ルーカス ポドルスキが試合後にコメントしたように、「アンラッキーな判定」だったと割り切るしかないのだ。
「アンラッキーで、勝点3や1が0になることは許容できない」という意見も、多いことだろう。
サポーターであれば、当然だと思う。
それでもそうした「不条理」を、我々は受け入れるしかない。
判定に関して、もう少しだけ話を続ける。
人間が目で見て裁く以上、判定に納得のいかない場面はこれからもあるだろう。
しかしそこで大事なのは、戦っている相手を間違えないことだ。
これから先、ヴィッセルがアジアでの戦いに挑む時には、本当に異次元の笛に出会う可能性すらあるのだ。
そのような状況を迎えたとき、審判と戦ったところで得るものなど何もない。
それよりは試合の中で、判定基準を探っていくような強かさが求められる。
試合を振り返ってみると、全般には川崎Fとの差を感じずにはいられなかった。
川崎Fが展開しているサッカーは、ヴィッセルが目指すサッカーと同一線上にある。
細かな方法論などは異なっているように思うが、自分たちでボールを保持しながら、試合をコントロールしていくというコンセプトは同一だ。
そのサッカーで、昨季はリーグ戦を制した。
試合を通じてのポゼッション率ではヴィッセルが川崎Fを僅かに上回ったが(52%)、実質的には川崎Fの後塵を拝したと見るべきだろう。
それが顕著に現れていたのが前半だった。
前半でヴィッセルが記録したシュートは1本。
この数字が表すように、ヴィッセルは思ったようにボールを前に運ぶことができなかった。
ボールを持ったとしても、それを運べるのは川崎Fのアタッキングサードまで。
最後の部分ではブロックを形成した川崎Fの守備を破ることができず、シュートを放つ状況まで持ち込めなかった。
これに対して川崎Fが見せたボールの動かし方は、ディフェンディングチャンピオンの名に相応しいものだった。
代表クラスの選手が揃い、風間八宏前監督時代から同じスタイルを貫いていることで、連携も高まっている。
しかし、この試合で見られた差が絶対的かと問われれば、応えは否だ。
川崎Fがチームとしてある程度完成形にあるのに対し、ヴィッセルは明らかに発展途上のチームだ。
伸びしろの大きさでいえば、それはヴィッセルに多く残されている。
次回の対戦までこの差を埋めることは、十分に可能だと考えている。
その意味でも、この試合で吉田監督が正面から川崎Fに対峙したことは良かった。
これが勝点を取るという目的だけであれば、リトリートした状態でブロックを組んで、ロングカウンターを狙うという方法もあった。
しかしそれをせずに、正面から組み合ったことで、ヴィッセルの選手、特に若い選手にとっては刺激となる部分が大きかったのではないだろうか。
まだシーズンが終了したわけではない。
この試合の結果を真摯に受け止め、この先の戦いに活かすことができれば、十分に価値のあった試合だったということになる。
次に、この試合で感じるべき川崎Fとの差を見ていく。
最大の差は、ボールを受けるときの姿勢にある。
川崎Fの選手、特にサイドの選手は後ろからのボールを受けるときに前方向を向いているが、ヴィッセルの選手はそれができていない。
ボールを受けてから前を向いているのだ。
この差は長くとも数秒のレベルではあるのだが、この僅かな時間が、相手に帰陣する余裕を与えてしまう。
これは、受け手だけの問題ではない。
前節にも書いたことだが、パスをつなぐ上では出し手と受け手の意思がプレーに表現されているかが問われる。
出し手は相手に対して、どのようなプレーをしてほしいかという意図を込めて、次のプレーに移り易い場所にボールを出す。
そして受け手はそのボールに込められた意図を組んで、受ける準備をしなければならない。
そうなると、自然、パスの精度は精緻を求められる。
さらにボールを止める動作にしても、インサイドだけを使うのではなく、次の動作に応じて止め方を変える工夫が必要となる。
日々のトレーニングからそこを意識することで、試合の中でそれを活かす工夫ができるようになる。
この繰り返しが「パス精度」を高めていく。
川崎Fの選手たちは、風間前監督時代からこうした技術を磨くことによって、密集の中でもスピードを落とすことなくパスをつなぐことができるようになったのだ。
もう一点、川崎Fとの差は、ボールを持っていない選手の動き方だ。
パスワークは受け手と出し手だけの問題ではなく、その周りの選手がどのように動くかによって、その難易度は変化する。
周りの選手の動きによっては、当事者をマークしている相手選手を動かすことができるためだ。
ヴィッセルの選手がパス交換の当事者だけで相手をかわそうとするのに対し、川崎Fは周りの選手がそこに関与することで、ボールが相手に渡るのを防いでいた。
こうしてつないだボールを動かす際にも、考えなければいけない点がある。
それは如何にして相手陣内へ素早くボールを動かしていくか、ということだ。
川崎Fの選手を見ていると、アタッキングサードへ入るまでの動作は、極めてシンプルであることが多い。
ワンタッチないしはツータッチで前にボールをつないでいくため、攻撃にスピード感がある。
これらの動きが確立すると、攻撃の選手は自然と前目のポジションから下がるケースが激減する。
そのため相手の守備網に対して、人数をかけた効果的な仕掛けができるのだ。
こうした行動を可能にするのは、やはり予測ということになる。
ボールを受ける前から、全ての選手がゴールまでの道筋を描いているかという点が問われる。
そこにおいては、ヴィッセルのサッカーには改善の余地がある。
この試合で前半、ルーカス ポドルスキが低い位置に落ちてくる時間が長かった。
理由は、ボールが出てこないためだ。
過去に何度も指摘しているように、ルーカス ポドルスキをどれだけ前でプレーさせることができるかというのは、ヴィッセルの攻撃力と直結した問題だ。
ここを改善するためには、シンプルに、そして正確に、素早く前にボールをつなぐことを意識しなければならない。
こうした全体の動きは、守備面についてもいえる。
試合後、川崎Fの阿部浩之は後半ヴィッセルに押し込まれた理由について、「嵌め切れなかった」と語った。
これは前半のヴィッセルもそうだったのだが、ファーストディフェンダーがチャレンジした際に、相手にボールを動かされることで、そのプレスが緩くなる。
結果として、ボールをどこで奪うかということがハッキリしないまま、ゴール前での跳ね返しの連続になってしまう。
攻撃と守備が不可分の関係にある以上、守備が嵌るということは、イコールいい攻撃につながるということでもある。
ボールを動かす相手に対してファーストディフェンダーが寄せ切るのは難しいだろうが、チームとして、どこでボールを取りに行くかということがハッキリしていれば、それほど慌てる事態ではない。
ここまで書いてきたことは、日々のトレーニングの中で意識し、それを試合で実践、反省点を改善というサイクルの中で、チームとして身につけなければならない。
選手層を考えたとき、ヴィッセルがこうした基本的な動きを整備することができたとき、コレまで以上に攻撃力のあるヴィッセルが姿を現す。

次に、何人かの選手について触れる。
この試合で最も大きな授業料を支払ったのは、宮大樹だ。
7分に家長昭博が蹴った左コーナーキックを、中央で谷口彰悟がヘディング。
これが前にいた大久保嘉人の足もとに入り、大久保がシュート。
コレはキム スンギュがセーブしたが、そのボールを宮が処理しようとしていたところに谷口が詰めて、宮からボールを奪う格好でゴールに押し込んだ。
この場面で宮は、落ちてくるボールを一旦はすぐに蹴ろうとしたが、ボールの高さが自分の間合いでなかったため、ボールが落ちてくるのを待ってしまった。
リーグ戦2試合目の先発となった宮だが、J1のトップクラスのチームを相手にした場合、自分の間合いでボールに触れることなど、ほぼないということを学んで欲しい。
自分の間合いで処理することは、プロの選手ならば誰でもできる。
問題は、そうでないときの対応だ。
あの場面で宮はボールにのみ目が向いており、自分の前には相手がいないスペースが広がっていることには気付いていなかった。
もしこれに気づいていたならば、宮は身体でトラップしながら、ボールをゴールマウスの前から外に出していただろう。
そして決勝点となった2失点目だが、この場面では小林に対する宮の対応は、ある意味教科書通りであり、間違いはない。
小林の技術が宮を上回っていたという見方もできるが、その実は準備段階に差があった。
小林は楔のボールを受ける前から、左側に反転しての抜け出しを企図していた。
これに対して宮は、まずは小林に身体を寄せて、そこで一旦小林を止めることに意識を向けていた。
その差が、相対した際の身体半分の差であり、その部分で小林はシュートする体勢まで持ち込んだのだ。
宮にとっては、これまで見たことのない動きだったのではないだろうか。
これが日本を代表するFWの動きだ。
あの場面で宮が取るべきだったのは、身体を正面から当て、小林の進路を完全に塞ぐ動きだった。
宮にとっては厳しい試合だったかもしれない。
しかしこれ以外のシーンで、宮はミスらしいミスもなく落ち着いて対応し続けていた。
能力の高さは疑うべくもない。
単に経験の差だったのだ。
結果的に2失点ともに絡んでしまった宮だが、こうした経験を積まなければセンターバックは成長しないポジションでもある。
この経験を糧に、宮がヴィッセルの守備の要に成長したとき、この試合で失った勝点3以上の対価をヴィッセルは手に入れることになる。
この経験を忘れることなく、そして萎縮することなく、成長を続けて欲しい。
宮には、それを託すだけの能力がある。

もう一人、この試合で触れておかなければならないのは小川だ。
この試合では右サイドハーフとして先発したが、見せ場といえば、冒頭で触れたあわやPKという抜け出しの場面だけだった。
小川を見ていて一つ気になったのは、筋力をつけた代償として、キレが落ちているのではないかという点だ。
小川が強靭な肉体をしていることは、ユニフォームの上からでも解る。
上のレベルで戦うために、身体を強くしたのだろう。
確かに相手の当たりに対しては強くなっているのだが、以前によく見せた身体を沈みこませて一気に相手の裏を取るような動きが影を潜めている。
単にプレースタイルの問題だけであればいいのだが、そうでないのだとすれば、もう一度自分のプレーについて考える必要があるかもしれない。
小川の持ち味は、天性ともいえるポジショニングのセンス、そしてキレとスピードだ。
この試合でもそれを活かすべく、チョン ウヨンが何度か相手裏へのボールを配球していたが、これに対して効果的に抜け出す場面は少なかった。
エウシーニョ程度の相手であれば、小川ならば十分に勝ち目はあると思っていたのだが、何か別のところに原因があるのだろうか。
サッカーに対してストイックで、誰よりもヴィッセルを愛している小川が苦しんでいる姿を見ると、胸が苦しくなる。
もう一度、あの爆発的なスピードで相手を置き去りにしてシュートを決め、「ケイジロウスマイル」を見せてほしい。

この試合で大きな可能性を感じたのは、佐々木大樹だった。
試合序盤は、得意のターンからの抜け出しが決まらず、ボールを奪われるシーンが散見されたが、時間経過とともに対応していった。
相手に身体を当てる前に、その先のプレーを考えているからこそ、相手の動きを制御する当て方ができていた。
シュートチャンスに大きく枠を外してしまったことは反省材料だが、全般にはJ1トップクラスのチームに対しても、問題なく戦えるということを示した。
本人とすれば満足いく出来ではなかったと思うが、この試合で得た感覚を大事にしてほしい。
こうした連戦の中では、佐々木のように自分で仕掛けて局面を打開できる選手は、貴重な戦力となる。
川崎Fの選手も多く口にしていたが、15連戦の最中、しかも前節から中2日という過酷な日程のため、両チームとも選手の動きは重かった。
ルーカス ポドルスキにしても、ロングパスがずれるなど、らしくない動きが見られたほどだ。

そんな中、一際輝いていたのが三田啓貴だ。
ボランチでスタートし、試合の中でサイドハーフにポジションを移すなど、難しい役割を求められたが、どの位置でも躍動していた。
相手の動きを読み、見事なボール奪取を見せたかと思えば、相手を引き付けてパスを通すなど、攻守に渡ってピッチ上で最も目立っていた。
贔屓目なしに、両チームを通じて最も高いパフォーマンスを発揮していたのは三田だった。
個々までのリーグ戦、全てに出場している三田だが、ケガだけには気をつけて欲しい。
今やルーカス ポドルスキと並ぶ心臓部となっている三田だが、この試合で決めたゴールは見事のひと言だ。
ティーラトンのクロスがこぼれてきたところに走りこみ、ダイレクトでシュート。
ゴール上に綺麗に突き刺した。
お世辞抜きに、このゴールはワールドクラスのゴールだった。
決してマッチョな体型には見えないが、体幹が強いのだろう。
三田よりも大きな選手に当てられても、バランスを崩すことがない。
試合終盤まで走り切るスタミナ、どんな体勢でもボールを失わない技術など、ゲームメーカーとして必要な能力を全て兼ね備えている素晴らしい選手だ。
試合には敗れたが、連続得点は継続中。
どんな試合でも得点を挙げられるヴィッセルの攻撃力は、今やJリーグでも屈指のものだ。
吉田監督もそこを信じているからこそ、試合終盤3バックへの変更など、大胆な手が打てる。
この試合でも、そこから一時は同点に追いついたように、この攻撃力は吉田監督をも成長させている。
次戦は中3日でFC東京戦。
好調をキープしている相手だけに、楽な試合とはならないだろう。
しかもチームの屋台骨であるチョン ウヨンが出場停止だが、以前から吉田監督が口にしているように総力戦で乗り切って欲しい。
どのような組み合わせで戦うのか予測はつかないが、今季のヴィッセルが持っている強さを活かすことができれば、十分に勝機はあると思っている。
この日もスタジアムを埋め尽くし、最高潮にムードを盛り上げたヴィッセルサポーターの声援も、チームを後押ししてくれるだろう。
厳しい日程は続くが、ヴィッセルのチーム力を信じて応援したいと思う。
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