【小学生の時】
■ある日のできごと■
ミー君は朝の5時ごろ、犬の散歩に出かけます。その時にドタドタと大きな足音をたてて階段を下りるので、他の家族が目を覚ましてしまいます。
◎なぜ?
相手の状況がわかりません。他の人がまだ寝ていることや大きな足音で起こしてしまうと迷惑なことがわかりません。
◆どうした?その1
相手がどう思うか考えてもらうために、次のような絵を見せて、絵の吹き出しの①と②に入るセリフを選んでもらいました。
①のセリフを選んでください。
A. 早起きでえらいなぁ。
B. もっと寝かせてくれー。
C. 元気でいいな。
②のセリフを選んでください。
D. 行ってらっしゃい。
E. 早く起きなくちゃ。
F. うわっ。何事だ!?
ミー君は①にはBの「もっと寝かせてくれー。」を、②にはFの「うわっ。何事だ!?」を選ぶことができました。絵を見ると状況がわかるので、他の人のことを考えることができました。
けれどもこれだけでは、どうしたらいいかがわかりません。
◆どうした?その2
そこで、どうしたらいいかを次のように書いて、説明しながら考えてもらいました。
ミー君は『階段を静かに下りたほうがよい。』を選びました。
でも、自閉症のミー君は力の加減が難しいので、どうしたら静かに下りられるのかわかりません。
◆どうした?その3
次に、静かに下りるための『下り方』を絵に描いて説明しました。
静かに階段を下りるコツ
●どうなった?
ミー君は階段を静かに下りることができました。
自閉症の子はズルやごまかしをすることがとても苦手です。まずそんなことをすることはありません。でも、また大きな足音で下りることがあるかもしれません。なぜなら、一生懸命注意して下りればできるのですが、気を抜くと元に戻ってしまって大きな音をたててしまうからです。誰でも、ずっと気を抜かないで何かをやり続けるのは大変なことです。
もし私たちが、いつも頑張ってなんとかできていることを、ちょっと気を抜いて失敗したときに叱られたら、どんな気持ちになるでしょうか?だから、ミー君がまた大きな足音で階段を下りてしまったときに叱ってしまうのはかわいそうです。そうしたときは、また『静かに下りるコツ』を見せて、「いつもがんばっていたんだよね。また気をつけようね。」と言ってあげることにしました。何年もかけるつもりで続ければ、少しずつできるようになると思いました。
大人になった今、ミー君は、ふだんは静かに階段を下ります。けれども急いでいる時などは、大きな足音になってしまうこともあります。そうした時は、「もう少し静かに下りようね。」と穏やかな口調で注意すると、素直に聞いてくれます。