皆様、いつもありがとうございます。


私は”狭義”の意味での「うつ」(何もする気がしない、希望が持てないなど)の

診断を受けたことはありません。

が、、

精神科では、慢性疼痛を”広義”の意味で「うつ」(身体表現性障害)ととらえることがあります。

このため、「うつ」関連の本はよく読みます。


「うつ」の概念は、もともとあいまいでしたが、

年々、その範囲が広がっています。

神経症に分類されていたパニック障害なども

ときには、うつと診断されるようになっているようです。

抗うつ薬が効けば、とりあえず広義の意味では「うつ」の範囲になるようです。

ですので、疼痛も、医師によっては「うつ」と診断する場合も少なくないのでしょう。


この本は、精神科医の片田珠美氏が

従来型のうつと、新型うつについて書いた本。

2011年発行、ちくま新書。


この本のページの大部分は、新型うつに割かれていましたが、

疼痛についても書かれており、とくに、

痛みと、自己愛(ナルシズム)が結び付けられている

ところは意外で、一気に読みました。

外部に向かっていた愛情の対象が喪失して行き場を失うと、

自己に向けられ、痛みになるという考え方です。


ところで、新型うつ、とは、「こうなったのは〇〇さんが悪いせいだ」という

強い自己愛的な思考をする状態のことです。

なにかにつけて

「医師が悪い」というモンスターペイシェントをはじめ、

病気療養に協力してくれているのに

「家族が悪い」という発想も、この分類に入るということでした。


社会の自由度が高まり、選択肢が増えたことでむしろ、

「自分が間違っていた」「自分に能力がないという事実を認めたくない」、と

新型うつが増えてきているようです。


なんとなく、

「限界を知ること」―うつに限らず、

これが

病気の治癒につながるのではないか、そう感じた1冊でした。