コーンフラワーの和名は矢車草。

青い小さなが放射線状についていて、それが矢車のようだからだそうです。

 

 

この花に出会ったのは、数年前の夏のイギリスでした。近所にあったメドウで見かけたのです。

 

このメドウは住宅街の川沿いにあって、15分もあれば歩けてしまうような小さなところでしたが小川があり、小さな林があり、野原がありました。

犬の散歩をする人、子供たちとピクニックをする人、友達とベンチに腰掛けてお喋りする人、バンドの練習をする人などがいつもいました。夏になるとタッパーを持った親子が野生のブラックベリーを摘みに来たりするようなところで、私も奥まったところにあるブラックベリーの茂みに目をつけていて、食べごろになるのを待ち遠しく思いながら通っていたものです。

 

水辺には茎の細い、手折ったらぐったりと首を垂れてしまいそうな花がよく咲いていました。

そんな、切り花として売られていないような野生の可憐な花が私は好きで、たまに1本、2本と摘んでは家に持ち帰り、小さな花瓶に挿して、うっとりと眺めるのが好きでした。

そんな花の一つが青いコーンフラワー。群生していることはなく、いつも離れたところにポツンと一本だけ咲いているような花。白い紙に青いインクを落として滲んだような色が儚げで、イギリスの田舎によく似合う花です。

 

今年の冬、ホームセンターで種を見つけたので、種を蒔いてみました。

芽が出てきてすぐに虫に喰われたようになったので、植木鉢を畑のミントを育ててるところに置きました。

虫はミントが苦手なので、この作戦はうまく行って、コーンフラワーはスクスクと育ち、先週あたりから花を咲かせ始めました。

 

ところが、念願の花が咲いたものの何かが違います。

あのイギリスで可憐に咲いていた花とは違って、なんだか逞しい感じで情緒がないのです。

その理由は眩しい南カリフォルニアの太陽と乾いた空気。

あのイギリスの、時には薄暗い、晴れている時にも光がそんなに強くない空気の中で見るコーンフラワーはもっと儚げで情緒があったように思います。

 

でも、切ってきて家の中に飾ったら、光の加減がちょうどよくなったようで「ああ、これは確かにあのコーンフラワーだ」というようになりました。家の中でそこだけフッと青くて、インク瓶の水に光が透けて見惚れます。

 

 

ところで、コーンフラワーはドイツの国花なのだそうです。

来月はドイツを訪れるので、自生しているコーンフラワーを見るのが楽しみです。