京都で、東福寺を訪れた時のこと。帰り道、雪舟寺というのが目に入った。
こじんまりとした料亭のような、入り口。入ってみることにした。
拝観料は500円。ここは、芬陀院という東福寺の塔頭。塔頭というのは本寺の境内にある末寺院のことだそう。
だから、東福寺の周りにはたくさんの寺院があるのかと納得。それらも塔頭なのかもしれない。
なぜ、ここが雪舟寺と呼ばれているかというと、ここの鶴亀の庭という枯山水の庭を雪舟が作ったと言われているからだ。小さいけれどすっきりとした建物に靴を脱いで上がると、畳の部屋にお寺の方とお客さんが座っていて、その方の家族の13回忌の相談をされているのが聞こえてくる。
庭に面した畳の廊下には、座布団が置いてある。
ここにゆったりと座って、お庭を眺めていってくださいということなのだろう。
初夏の庭の緑が眩しくて、風にそっと揺れる木々の葉の音が聞こえるだけ。
清潔で掃除が気持ちよく行き届いていて、風情があって、この小さな空間の中に全てがあるとでもいうようなところだった。
心を静かにして、少し座ってみる。
こういう時間は、なかなかないもの。だからか京都にくると心がスッキリとする。
古いのに、澱んでいない。
垢じみたところがない。日々、すっきりと清められて、丁寧に扱われている建物、建具。
手入れの行き届いた庭。
人々の丁寧な生活。こういうものを洗練と言うのかもしれないと思った。