夫と息子と三人で、娘の住むロスに遊びに行く事にした。
平日の夕方、私が仕事から帰ってきてから、家に泊まっていた娘の車でロスへと向かう。
ダウンタウンのホテルに予約を入れた。晩御飯はコリアンタウンで娘のボーイフレンドも合流して
焼肉を食べる事にした。
私は胃が疲れているみたいで、もうもうとした煙の中、運ばれてくる肉やおかずをモリモリと食べる人たちに囲まれて、なんだか自分だけ生命力のレベルが低いように感じて少し悲しくなる。
日本でも、アメリカに戻ってきてからも、周りに合わせて食事をすることが多くて、体がちょっとだけ疲れている。
私はシンプルなパンにチーズとか、ビールを飲みながら冷奴を食べたり、さっぱりと蕎麦だけでいいのだけれど、食欲旺盛な人たちが周りにいるとそうもいかない。
晩御飯の後、娘に車でホテルに連れてきてもらった。
チェックインは、もうオンラインで済ませてあるので、建物の入り口やドアのセキュリティパネルにコード番号を入れればいい。
古いビルジングは、ホテルとして建てられたものではなくて、中をリノベーションしてホテル仕様にしているようだ。1900年代初頭に建てられた大きな建物は部屋の中の壁が古い煉瓦で、床はコンクリートだった。
私たちの部屋は5階。同じ階にラウンジがあり、広いバルコニーにはソファが並べてあった。
5階のバルコニーから見上げるホテルの建物。一番上にはペントハウス。
夫が、近くの店でお酒を買ってきてくれたので、ここに座ってビールを飲んだ。
ここから見回す周りのビルは、みんな古くて大きい。
金曜の夜なので、夜遊びに出かける人たちも歩いているけれど、他はフラフラと行き場がないように歩く浮浪者のような人がいるばかり。
昔の華やかなロサンジェルスを十分に彷彿とさせる街並みだけれど、今はなんとなく寂しい。
それでも、このあたりのマンションに暮らす人たちは経済的にとても裕福な人たちだとは思う。
広いベッドルームに、キッチンが付いて、バスルームは二つ、スタディと、もう一つのベッドルームもある。洗濯機も乾燥機も付いているから長期滞在に向いている(経済的余裕があれば)ホテル。
冷蔵庫も調理台も、食器、調理器具もみんな揃っている。
無機質とも言える、古い建物の窓から街を見下ろすと、ハードボイルドな映画のセットにいるような気分になってくる。ハンフリー・ボガードとかが出てくるようなフィルム・ノワール(白黒映画)みたいな。
張っていたお腹も、浮腫んでいた脚も、怠かった体も、大きな深いバスタブに浸かり、バーボンの水割りを飲んだら楽になった。
何度も訪れているロサンジェルスだけれど、いまいち、心地よい過ごし方がまだわからない。
でも、ここのホテルは気に入った。
最近、ホテルで過ごすコツみたいなのが少しだけわかってきたような気がする。
今までは、ホテルの部屋にいるのなんて退屈なだけだと思っていて、ホテルでルームサービスを頼んで過ごすのが好きなんていう知り合いの話を聞いても、何がいいんだろうと思っていた。
非日常と日常のはざまで、ちょっとだけ息をついて、のんびりと休息が出来るそんな都会のホテルに泊まるのもいいものだと気づいた夜だった。