日本での日々も残り少なくなり、残りの日々は東京の近場で過ごそうということになった。
ある日、息子が秋葉原に行きたいといった。私は秋葉原に興味がないので、千代田線の新御茶ノ水で別れて別行動をとる事にした。
息子はこの頃には、自分で行きたい場所へ1人で行けるようになってきていたので、私の自由時間も増えてきた。私はその先の根津駅まで行き、東京大学のすぐ近くにある弥生美術館、竹久夢二美術館へ行く事にした。
というのも、その前の鎌倉への旅で、お土産屋さんで買った竹久夢二デザインの風呂敷がすごく気に入ったので、別のデザインのものも欲しくなったからだった。
それで、竹久夢二美術館に行けば色々と選べるのではないかと思ったのだ。
竹久夢二のデザインのものは、お弁当包みなども持っているのだけれど、デザインが全然古臭くない。
竹久夢二は日本のウィリアム・モリスのような存在なのではないだろうか?
もっともっと、人気があってもおかしくないのになあと思う。
私は、今回はサヤエンドウのデザインの風呂敷を買ったのだけれど、ドクダミの花とか、イチゴの模様、椿の柄などもとってもいい。
息子とは新御茶ノ水の駅で待ち合わせしていたのだけれど、まだまだ時間がある。
万世橋の近くで、どうしようかなあと思っていたら、すぐ近くに銭湯があるらしい。
時間潰しに行ってみることにした。
都会のビルの間にある、極楽湯。エレベーターが付いているような近代的な建物。
リラックスルームや漫画がいっぱいあるルームもあるらしく、昼間だというのに結構混んでいた。
鬼滅の刃とのコラボレーションをしているらしい。
極楽湯は、どうやらチェーン店のスーパー銭湯のようだ。
なんとなく、暗くて狭い感じで、銭湯の広々とした天井の高い感じがなかった。
丸い形の緑色のタイルの浴槽があり、大正ロマンという感じだった。
そのお湯には袋に入った漢方薬が、ティーバッグのように浮かんでいて、それは実母散という更年期障害に薬効のあるものらしかった。
ホットフラッシュに悩まされている私としては、更年期障害に効く漢方薬に興味を覚えた。
湿度と気温の高い東京都内を歩き回って汗ばんでいたので、お風呂に入ってさっぱりした。
それでも、まだ時間がある。
線路の向こうに緑豊かな場所が見えて、お寺のような建物の屋根の緑色の瓦が見えた。
あそこは何だろう?と興味をそそられて行ってみると「湯島聖堂」だった。孔子の祀られているところらしい。
やっぱり、こういう緑のあるところが落ち着く。
だから、今回の旅ではお寺や神社に行くことが多いのかもしれない。
中国風の建物と大きな屋根。
すっきりとした、柱の大きな建物で、気持ちがいい。
この界隈のうるさい感じ、雑踏からかけ離れた清らかで静かな場所には、ほとんど人がいなかった。
新御茶ノ水の駅のすぐそばにあって、ここだけ別世界のようで、こんなところがあるんだと私はとても気に入ったのだった。
さて、別の日には、私たちは東京駅へ行った。
姉が、東京駅から新幹線で出かけた際、お弁当を買うお店などがたくさんあって、東京駅がすごくなっているというので、お上りさん気分で東京駅見物に出かけたのだった。
休日の大手町近辺はがらんとしていて、特にみるものもなく広い通りを歩いて行った。
東京駅は、どこも人混みで、地下街もぎゅうぎゅうで、すぐに疲れてしまった。
もう、すぐに帰りたくなったけれど、せっかく来たので大丸でお茶でもしていこうということになった。
でも、イノダコーヒーも、辻利(かき氷が食べたかった)も大行列。
レストラン街に、天ぷらのつな八があったので、そこでお昼ご飯を食べる事にした。
子供の頃、つな八には何度か天ぷらを食べに連れて行ってもらった。
一つ一つ揚げたてを目の前に出してくれるのが新鮮で、カラッと揚がった天ぷらが美味で、まさにご馳走だった。アイスクリームの天ぷらなるものを食べたこともあった。
そんな懐かしのつな八。
カウンターでは、ビールを飲みながら天ぷらを楽しんでいる夫婦などもいて、いい雰囲気だった。
どうして、観光客などが、あんなに混雑したところで楽しめるのか私にはわからない。
街と人混みに私は、すぐに疲れてうんざりしてしまう。
なので、ちょこちょこと神社とか公園とか銭湯とかで息抜きをする東京観光スタイルが私には合っているみたいだ。